2007/07/25

神社を建てましょう。


Juzo Itami, originally uploaded by slowhand7530.

伊丹さんの本と出会ったのは大学一年の頃だった。
それからは寝ても覚めても伊丹十三だった。
何度も読むうちに文章も暗記してしまった。
僕の脳全体が、当時この人一色に染められていた。
それは恋のようなものだった。
僕の人生ではいろんな人に強い感化を受けてきたけれど、ある時代に僕の脳を、文字通り完全に一色に染めぬいた人たちは
ビートルズ、坂口安吾、チェスタトン、伊丹十三、村上春樹、河合隼雄、内田樹の7人である。
内田病にかかってからはまだ5年なので、今後のことはわからないが、脳に染みついたこの人たちの色はおそらく生涯ぬけないだろう。

あれから27年も経つけれど、伊丹さんはふいに僕の心に現れて僕を驚かせる。
以前友人に伊丹映画のメイキングDVDを貸してあげるといわれたが、観たらまた伊丹さんの熱にうかされるに決まっているので断った。
僕の中では伊丹さんは終わっていない。人間としての伊丹さんと、伊丹さんの残した作品を愛している人々にとって、伊丹さんはずっと終わらないだろう。

伊丹さんの最後が、やはり問題なのだ。あれはいったい何だったんだろう。
事件当時、僕の中ではあれは殺人以外にはあり得なかった。
大江健三郎の『取り替え子』を読んで、文章からは全く殺人の匂いがしないので自殺だったのかもしれないと思うようになった。
だが彼を遠くから愛していた人々にとって、あの事件は今も心の中の黒いしこりである。

どうしたらいいのだろう。
無念の死を遂げた伊丹さんと彼を惜しむ人々のために、
僕は伊丹十三記念館の横に伊丹神社を建てて祀ってもらうしかないと思う。
いや、冗談じゃなく。

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