2007/08/30

君の名はアイアイ

ぼくたちは深い縦穴の底に住んでいる。
壁に耳を澄ませると
かすかに隣の住人の声がする。

ときにぼくたちは隣の住人と
かりそめの横穴で直接会うことがある。
その横穴を「悲しみ」という。


SA3A0002.jpg, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/26

stain

昨日の話の続き。

問いを解くというのは、自分が問いの外にあることを意味します。
問題は自分にあるではなく、自分の外にある。つまり悪いのはあの人だ、悪いのは組織だ、悪いのは社会だというスタンスです。

僕はある日の夕方車を運転していて、ある問題のことを考えていました。
その問題は、なかなか解けない問題だったのです。そして車のフロントガラスのずっと向こうにある薄暗がりの中に生えている大きな木をぼんやり見ていました。
この木の枝の上に、枝の上に止まっているフクロウのように、「問題」はあるだろうか?と考えたときに、
ああ。そうか。「問題」は僕の外ではなくて、僕の中にあるんだ。問題を造っているのは、実は僕自身なんだという事に気付きました。
僕の外では確かにいろんな現象が起こっているけれど、それはある意味では物体の移動に過ぎない。それを「ゆゆしき問題」ととらえているのは僕の頭なのだ。
そうか。問題を造っているのも、それが解けなくて困っているのも僕の頭の中だけの話なのだ。
僕は自分でパズルを作って、それが解けずに困っている。
じゃあ、なぜ僕はそのパズルを作ったのか。そしてそのパズルはなぜ解けないのか。
それは僕の中の、溶けることを僕自身に許していない部分だからです。
少なくとも今の僕にとって溶けては困る部分だからです。
その部分は「溶けない」という大事な役割を担っている。
「解けない謎」という役割を担っているから、それは解けないのだ。
解けないものを解こうとするから、問題がさらに複雑になって、苦悩が大きくなっていく。

禅の立場は、「かれの全存在が世界のはじめから終わりまでをおし包む一大疑問符となってしまう」こと。
その問題が、解けないという役割を終えたとき、問題はおのずから溶けている。


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2007/08/25

青い岩と緑の草

問いを解くとは、それと一つになることである。
この一つになることが、そのもっとも深い意味において行われるとき、
問う者が問題を解こうと努めなくとも、解決はこの一体性の中から、おのずから生まれてくる。
その時、問いがみずからを解くのである。
                   鈴木大拙 「禅」より


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my nightcap

宮崎駿が挿絵を描いている「ブラッカムの爆撃機」。
最近の僕のnightcapです。


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cell-phone in the dark


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2007/08/24

尊敬は丁寧の母

「丁寧」を目指して始めたブログ
僕はカフカの「城」のように「丁寧」のまわりをぐるぐる回っていて
なかなか「丁寧」にたどり着けなかった。

きのう「尊敬」を発見して気が付いた。

尊敬は丁寧の母。
丁寧は尊敬から生まれる。
この世にある一つ一つの物や人に尊敬(respect)の気持ちを持つと
そこに自然と丁寧が生まれる。

ブログを始めるときに
「丁寧に生きる練習」をネットでフランス語に自動翻訳してブログの副題に付けました。

それが「pratique de vivre avec le respect」でした。

自分でも気が付かずにrespectという単語が入ってた(笑)。

そうか
このブログのテーマは「尊敬」だったのか。

2007/08/23

尊敬と軽蔑という二項軸

僕が新しい人と機材とシステムとの間にラポールを結べないのは
僕の中に深い「軽蔑」があったからだ。
そのことに、今日通勤中の車を運転していてやっと気が付いた。
やっと気が付いた。
どうして今までそのことに気が付かなかったんだろう。
それは僕自身が、どうしようもないほど激しく「尊敬」を望んでいたからだ。

2007/08/22

ほどなく激しい雨が


人と機材が刺々しい
まだラポールが結べていないんだ
僕は雲行きを見ている
僕は今他人の天気図の上にいる
気圧の変化を感じるまで待とう
空は青いが
ほどなく激しい雨が降る

20070822 002, originally uploaded by slowhand7530.

20070822 002


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20070822 001


20070822 001, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/20

deep bow

「最近はお辞儀をしながら上目遣いでこちらの表情をうかがっている若い子が多いですね。
武士の心得から言えば、頭を下げるということはその瞬間に相手に刀で首を斬り落とされても仕方がないと覚悟して頭を下げるのです。お辞儀はすべからくこのわたしのように潔く頭を下げたいものです」
「キミはお侍さんか」


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2007/08/19

夏緑深し #4


夏緑深し, originally uploaded by slowhand7530.

夏緑深し #3


夏緑深し, originally uploaded by slowhand7530.

夏緑深し #2


夏緑深し, originally uploaded by slowhand7530.

夏緑深し #1


夏緑深し, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/18

fireworks 1


fireworks (12), originally uploaded by slowhand7530.

fireworks 2


fireworks (13), originally uploaded by slowhand7530.

fireworks 3


fireworks (14), originally uploaded by slowhand7530.

fireworks 4


fireworks (15), originally uploaded by slowhand7530.

fireworks 5


fireworks (16), originally uploaded by slowhand7530.

花虎の尾

ご近所に咲いていたきれいなlight purpleの花。
シソ科の植物で、日本には大正時代にアメリカからやってきたそうです。
花が稲穂のようにつく形をトラのシッポに見立てたのが名前のいわれとか。
朝の光の中ではいろんなものが輝いて見えます。


Physostegia virginiana, originally uploaded by slowhand7530.

花虎の尾


Physostegia virginiana, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/17

恋の森

あれは僕が高校一年の休み時間だっただろうか。廊下側の壁に背を向けて座っていた男子同級生が、「ああ、燃えるような恋がしたいなあ」と言ったのだ。
ざわめいていた教室はしーんと静まりかえって、次の瞬間クラスの全員が爆笑した。彼はちょっと夢見がちなところのある目立たない生徒だったが、みんなに笑われて赤くなっていた。
僕も真っ先に爆笑した一人だった。その当時の僕にとって、「恋」はオリオン星雲より遠く、無関心というよりも、むしろ「あんなもの」でしかなかった。男のくせに、何を言ってるんだ。頭がおかしいんじゃないか。
それから10年くらいたって、僕はようやく彼の発言の意味を深く理解した。軽蔑していたあの「恋」の森に、僕も深く入り込んでしまったのだ。

最近になって、ふと僕は気が付く。
いつの間にか僕は自分が森からずいぶん遠い所にいることに。
別に寂しくもないが、なんだか懐かしい。
清水君、あのときは笑ったりしてごめんね。

2007/08/15

むらしぐれ

退職の時に辻先生にもらったむか新の「むらしぐれ」。
今日食べ終わって
ようやく僕の中の泉州時代が終わった。
とりあえず3年はがんばろうと思ったけど
21年も過ごしてしまいました。


Japanese cake, originally uploaded by slowhand7530.

夕焼け前のひととき


at the fall of evening #2, originally uploaded by slowhand7530.

夏の夕暮れ

なにゆえに
せつなさが胸にせまるのか



at the fall of evening #1, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/14

tea box 3

職場の同僚から香港のおみやげにペニンシュラホテルの紅茶をいただきました。
紅茶の箱をわざとピントをぼかしてアップで撮ってみました。


tea box 3, originally uploaded by slowhand7530.

tea box 2


tea box 2, originally uploaded by slowhand7530.

tea box 1


tea box 1, originally uploaded by slowhand7530.

on the desk


on the desk, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/13

「現実」の食べ方

朝起きて、もう既にブルーなら、それはどんな問題か。
「今日も中華か」とため息をつく。
だが現実をいつも同じ味で調理しているのはぼく自身だ。

ぼくははいつも同じ味付けで現実を食べていないだろうか。
心をニュートラルにして、器を空にして、今日やってきた素材を、その素材に応じて自由に味付けすることができるだろうか。

2007/08/12

in the early light


in the early light, originally uploaded by slowhand7530.

sunday morning


sunday morning 3, originally uploaded by slowhand7530.

ちょっとした憂鬱が色を添える

日曜の朝というのに
ぼくは気が重い
それはユウウツ
またの名をメランコリー
でもすぐにぼくは気が付くよ
キャンバスの上では憂鬱も一つの色


sunday morning 1, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/11

crape myrtle in full bloom

我々の呼気は、宇宙全域の呼気である
我々の吸気は、宇宙全域の吸気である
かくして我々は刹那刹那に於いて
無限の大事をなしているのだ。        澤木興道師


crape myrtle in full bloom, originally uploaded by slowhand7530.

yellow and blue

yellow and blue

2007/08/10

夕方の積乱雲

フカヒレスープ風


incus of sunset, originally uploaded by slowhand7530.

和久平八郎の「現場」

定年前の老刑事、いかりや長介演じるご存じ「わくさん」。
彼が生涯を過ごした「現場」。
現場とはどんなところか。
現場とはいつも不測の事態が起きる場所。
同じ事件はひとつとしてなく、
どんな小さな事件も全力を注がなければ解決は得られない。
(全力をつくしたとて満足のいく解決が得られるとは限らない)
イチローが王監督に「バッティングが簡単だと思ったことがありますか」と聞いたとき 王監督はこう答えたという。「そんな時期は全くなかった」。
それが現場。
いつも現場にいて、現場の空気を吸っていること。

2007/08/09

Salade de pore


Salade de pore, originally uploaded by slowhand7530.

おもいわずらうことなく
愉快に生きよ。

2007/08/07

ディテール

私が普段見ている世界は私が作った物語の表象であり私のイデアそのものである。私は自ら進んで私が作った不幸の物語に入っていく。
私はどのようにしたらイデアの牢獄から脱出できるだろうか。

対象を処理しようとしたその刹那に、立ち止まってそのディテールに気を配ると、対象に対するラポール(温かい交流)が出現する。
それは私のバーチャル世界に穴が開く瞬間である。
私たちはディテールを介してしか、世界を愛せない。
私たちはディテールを介して、世界のつぶやきを聞く。
穴の向こうがまた新たなバーチャル世界だとしても、多様なモードに開かれているということに意味がある。

ではなぜ対象のディテールに気を配るとラポールが生じるのか。
ディテールには善悪美醜がないからである。
ディテールはイデアを纏っていないために善悪美醜を免れている。
あるいはディテールに立ち止まるという行為、
立ち止まるという行為そのものが、とりもなおさず「私のバーチャル」のリセットなのかもしれない。

立ち止まって、ディテールを聴く。


evening star, originally uploaded by slowhand7530.

evening star


evening star, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/05

鹿の子の模様の百合

山道を散歩していて見つけました。カノコユリという百合。
花弁に鹿の子模様の斑点があるのが名前の言われだそうです。


Lilium speciosum, originally uploaded by slowhand7530.

小さな石から大きな発見

今朝犬の散歩で小石を蹴っていたら、うまく蹴ることができるときと、そうでないときの違いに気が付きました。
小石までの距離を目算して歩幅を合わせ、蹴る瞬間に神経を集中して蹴ると小石はうまく飛んでいかない。
小石を蹴る少し前に調整が終わっていて、蹴るときにはすでに蹴った後をイメージしている場合には、小石は理想的な飛跡で飛んでいく。

「石を蹴る瞬間には、もうすでに石蹴りは終わっている!」

普段の仕事でも失敗が許されない場面に遭遇することは多い。もし僕がこれまでその仕事に充分な経験を積んできたなら、もうそのことは終わっているかのようにかかわるのが失敗しないこつかもしれない。


pebble, originally uploaded by slowhand7530.

夏の花

夏の空の下のあざやかな木槿の花です。

2007/08/04

Cayratia japonica

おお、なんと小さくて、可愛くて、綺麗なオレンジ色の花!
さっそく帰って「野草・雑草観察図鑑」(成美堂出版)で調べてみると、
『ヤブガラシ。蔓を勢いよく伸ばして、まといついた草木を覆い尽くし、ついには枯らしてしまうほど繁殖力が強い。‥‥橙黄色の花托の一部が肥大したものが蜜を分泌して虫を誘う』

う~ん、キミってそういう子だったの?でもそこがまた魅力かも。


Cayratia japonica, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/03


20070802 005, originally uploaded by slowhand7530.


20070802 004, originally uploaded by slowhand7530.


20070802 003, originally uploaded by slowhand7530.


20070802 002, originally uploaded by slowhand7530.


20070802 001, originally uploaded by slowhand7530.

2007/08/01

雨乞い師

 大へんな旱魁があった。
何ヵ月もの間一滴の雨も降らず状況は深刻だった。
カトリック教徒たちは行列をし、プロテスタントたちはお祈りをし、中国人は線香をたき、銃を撃って旱魁を起こしているデモンたちを驚かせたが何の効果もなかった。最後にその中国人が言った。
「雨乞い師を呼んで来よう」
そこで別な地域からひからびた老人が呼ばれてきた。
彼はどこか一軒の静かな小さい家を貸してくれとだけ頼み、三日の間その家の中に閉じこもってしまった。
四日目になると雲が集まってきて大へんな吹雪になった。雪など降るような季節ではなかった。それも非常に大量の雪だったのである。
町中は、すばらしい雨乞い師の噂でもちきりであった。
そこでリヒアルト・ヴィルヘルムは出かけて行ってその老人に会い、どんなことをしたのかとたずねた。彼はまったくヨーロッパ風にこう聞いたのである。
「彼らはあなたのことを雨乞い師とよんでいる。あなたがどのようにして雪を降らせたのか、教えていただけますか?」
するとその小柄な中国人は言った。「私は雪を降らせたりはしません。私は関係ありません」
「ではこの三日間あなたは何をしていたのです?」
「ああ、そのことなら説明できます。私は別の地方からここへやってきたのですが、そこでは万事が秩序立っていたのです。ところがここのひとたちは秩序から外れていて、天の命じている通りになっていないのですよ。つまりこの地域全体がタオの中にないというわけです。ですから私も秩序の乱れた地域に居るわけで、そのために私まで物事の自然な秩序の中に居ないという状態になってしまったわけです。そこで私は三日間、私がタオに帰って、自然に雨がやってくるまで待っていなくてはならなかったというわけなんです」
『タオ心理学 ジーン・シノダ・ボーレン著 春秋社』
 
不思議な話である。
実際に雨が降ったのも不思議だが、更に不思議なのは雨乞い師には自分が雨を降らせたという自覚がないことだ。
彼は雨乞い師として呼ばれたのに雨が降ったことに自分は関係がないというのだ。
実際に彼がやったのは彼自身がタオ、すなわち天の声と一体化するのを待つということだった。
天の声と一体化するためには天の声を聞く必要がある。そこで彼は静かな小さな家を借りて、そこに三日間閉じこもった。
彼が天の声と一体化したときに雨が降った。結果として。そしてそれは彼にとってあたりまえのことだった。


赤ん坊がお腹をすかして泣いている
母親が赤ん坊にお乳をあげる
赤ん坊が泣き止む
あるひとが母親に尋ねる
あなたはどうやって赤ん坊を泣きやめさせたのですか
母親は答える
いいえ、私は泣きやめさせたりはしません
この子にお乳をあげたのです
 
 
 
 
このお話の重要なポイントはいくつかあるが、その一つが雨乞い師の「私は雪を降らせたりはしません。私は関係ありません」という発言である。
再び『弓と禅』を引用する。

そこである日私は師範に尋ねた。
「いったい射というのはどうして放されることができましょうか、もし私がしなければ」
「それが射るのです」と彼は答えた。
「そのことは今までに既に二、三回承りました。ですから問い方を変えねばなりません。いったい私がどうして自分を忘れ、放れを待つことができましょうか。もしも私がもはや決してそこにあってはならないならば。」
「それが満を持しているのです」
「ではこのそれとは誰ですか。なんですか。」

それからのちのある日、ヘリゲルの一射のあと師範はお辞儀をしてこう告げる。

「今し方それが射ました」 

「それはあなたに関係があってはならぬものです。また私はあなたに向かってお辞儀したのでもありません、というのはあなたはこの射には全く責任がないからです。」

雨乞い師と弓の師範はこうして奇しくも同じ言葉を述べる。









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