2008/05/19

その植物



その植物は前から気になっていた。
道の裂け目からわずかに芽を出したかと思うと、みるみるうちにアスファルトを押し広げ、地面を盛り上げながらすごい勢いで成長していく。
見たことのない植物だけど熱帯の帰化植物かなにかだろうか。それにしてもすごい生命力だ。どんどん道路が盛り上がっていくけど大丈夫なんだろうかと思っているうちに、とうとうある日切り倒されてしまった。株の切断面と成長の早さから、これは木じゃなくて草の種類だろうと思うけど、瞬く間に高さ数メートルに達する様子はなんだか怪物じみている。

花はきれいな藤色だけど茶色の実をいっぱいぶら下げている様子も下品だし。そもそも樹形からして品がない。熱帯の植物みたいにザワザワと枝と葉っぱを四方八方に伸ばしているのがだらしない。庭にこの植物を植えている家を見たことがあるけど、こんな恐ろしい植物を植えるなんてその家の人はいったい何を考えているんだろう。とても正気の沙汰とは思えない。
犬の散歩に行ったときも山の斜面にこの植物が我が物顔に屹立しているのを見て、ああいやだ。草のくせにこんなに大きくなっちゃって。きっとみんなの嫌われものなんだろう。人の手の入らないこんな山の斜面でしか思う存分繁殖できないんだといまいましく眺めていた。

バイクで
大野山に行ったときも道中や帰りの山道にも生えている。けっこうよく見る植物なのだ。
それにしてもこの樹のような草のような植物の名前は何というのだろう。小学生の時に見た怪物図鑑に「マンドラゴラ」という恐ろしい名前の植物が載っていたけど、きっとこの植物もそんなまがまがしい名前に違いない。

どうにも気になってしようがないから、家にある植物図鑑などを手当たり次第に当たってみるがわからない。
それでGoogleで調べてみた。

「草なのに木のように大きくて」
→はずれ。
「藤のような 大きな」
→はずれ。
「草なのに 藤」
→はずれ。
「草なのに巨大」
→はずれ。
「巨大な草」
→はずれ。
「成長が速い 草 紫の花」

ここでようやく「桐」という言葉に出くわす。
キリ?
?????
まさかと思いながら「桐」をGoogle画像で調べると、まさしくあのまがまがしい植物がずらずらと出てきた。
・・・・・・・
なんと、
あれは桐だったんだ。

むかし親しかった同僚に桐田さんという女性がいて、色白で頭のいい子だったけど、当時から僕の中には「桐」というのは品のいい高貴な樹のイメージがあったんだ。
それがあの植物だなんて。

でもネットでいろいろ調べるうちにわかってきた。
以下Wikipediaより
「キリは古くから良質の木材として重宝されており、下駄や箪笥、箏(こと)、神楽面の材料となる。伝統的に神聖な木とみなされ、家紋や紋章の意匠に取り入れられてきた。花言葉は「高尚」。
キリは日本国内でとれる木材としては最も軽い。また、湿気を通さず、割れや狂いが少ないという特徴があり、高級木材として重宝されてきた。日本では箏や箱、家具、特に箪笥の材料として用いられることが多く、桐箪笥といえば高級家具の代名詞である。かつて日本では女の子が生まれるとキリを植え、結婚する際にはそのキリで箪笥を作り嫁入り道具にするという風習もあった。キリは成長が早いためこのようなことが可能なのである。
日本には白桐をもとに意匠化された家紋がいくつかある。それらを総称して桐紋もしくは桐花紋というが、中でも五七の桐と呼ばれるスタイルが有名である。
古くから桐は鳳凰の止まる木として神聖視されており、日本でも嵯峨天皇の頃から天皇の衣類の刺繍や染め抜きに用いられるなど、「菊の御紋」に次ぐ高貴な紋章とされた。また中世以降は天下人たる武家が望んだ家紋としても有名で、足利尊氏や豊臣秀吉などもこれを天皇から賜っている。このため五七桐は「政権担当者の紋章」という認識が定着することになった。
近代以降も五七桐は「日本国政府の紋章」として大礼服や旭日章、瑞宝章の意匠にとり入れられたり、菊花紋に準じる国章としてビザやパスポートなどの書類の装飾に使われたり、「内閣総理大臣の紋章」として官邸の備品や総理の演台に取付けられるプレートに使われている。」

さらに現在僕達が使っている五百円硬貨の表のデザインも「桐」であるということを知るに及んで僕はまったく茫然としてしまった。

気を取り直してGoogleで「桐は草?」と入れて検索すると、やはり桐は草の仲間のようで、ゴマノハグサ科に属する植物だった。桐は樹ではなかったんだ。
ゴマノハグサ科といえば漢方では地黄や玄参がそうだし、ジギタリスもそうだ。

そうか。
そうだったのか。

3 件のコメント:

  1. 匿名5/20/2008

    草本と木本、生物と無生物、男性と女性、果物と野菜、、、、これってくっきりしているようでファジー、グラデーションな気がしませんか?

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  2. >みゆさん。
    「草のくせに大きくなりやがって」なんて言っちゃダメですね。
    普段お世話になっているバナナも大きいけど草の仲間らしいです。

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  3. 匿名5/21/2008

     バナナ。。。どうしてあんなにおいしいんでしょうか?草のくせに、、、
     バナナスタンドにバナナケース、取り揃えてバナナライフを楽しんでいますよ。

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