2009/08/19

電気が点いた日

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さんまのからくりテレビなんかを見ていると、猛烈に大人びた子供たちが登場してきてびっくりしてしまう。
ただの大人じゃなく、「すれきった大人」にしてようやく口にすることの出来るような言葉をしゃべっている。
まあ、あれはやらせなのかもしれないけど、先日ニュース番組でお盆の帰省電車から降りてきた小学校低学年位の女の子が、インタビュアーから今後の夏休みの予定を聞かれて、「まあお父さん次第だね」と答えるのを見て、そういう時代なのかと思った。

僕が子供の頃は果てしなく「ぼー」としていたような気がする。
今のテレビに出てくる子供達が「覚醒している」子供達とすると、僕の子供時代はまるで「朦朧(もうろう)状態」だ。
たまに自分の小学校の卒業アルバムを見ると、笑ってしまう。ほかの子供達の多くが「覚醒」した顔をしているのに、僕だけバットで思い切り頭を殴られたあとのような、視点のあっていない顔をしている。
一体この子はどうしたんだろう。
どう客観的に見ても、この子の脳は眠っているじゃないか!

何度も言うようだけど(笑)、だからテレビで覚醒している子供達を見ると心の底から驚いてしまう。
この子達は、僕の子供時代とまったく違う。
まるで同じ星の人間とは思えないほどだ。

僕の脳が覚醒し始めたのは、たぶん中学三年のときだと思う。
僕が通っていた中学は家から歩いて30分位あるので、行き帰りに歩きながらいろんな事を考える。
ある日学校が終わって、夕方一人でとぼとぼと家路を歩いていた。
左手には国道、右手には稲刈りもとっくに終わった田んぼがあった。晩秋だった。
僕はぼんやり自分の抱える問題の多くが、ある一つの単語に収斂していくことに気が付いた。それは「弱さ」という単語だった。
僕が持っているいろんな問題が、その単語一つで全部説明できることにハタと気が付いたのだ。
僕は非常に驚いた。
その時僕は、頭の中が全部見えた気がした。
それはまさに、僕の部屋の中に初めて電気が点いた(ついた)日だった。

頭の中に電気が点いたのはその日だったが、それからあとも頭の外は暗いままだった。
頭の外の電気が点くのは、それよりもずっと後のことだ。
たぶんそれは30過ぎだと思う。

僕は30歳ごろにようやく頭の外の電気が点いた。
僕の頭の外の電気は、灯台みたいに遠くの方はよく照らすけど足下はかなり暗い。
たぶん帰省電車から降りてきた女の子のほうがずっと明るいと思う。
頭の内と外の電源は一つなので、頭の内側に電力が取られているときはとくに頭の外の灯りが弱くなってしまう。
そんなわけで、この人はいい歳をして身の回りの人間関係がよくわかっていないふしがある。
それにこの人はいろんな場所でよく頭をぶつける。
頭の形がいびつなのはそのせいかもしれない。

2 件のコメント:

  1. みゆ8/27/2009

     ん~、電気。「物心ついた」っていう「物心」のもうちょっと進化した感じでしょうか。混沌からふと抜け出した感じ、または「あ~」とか「う~」とか言っていた子どもが急にしゃべり始めた瞬間のような、そんな感じでしょうか。私もやはり電気がついたのは30代だったような気がしています。

     全然関係ないんですけど、今日の月の加減がクロワッサンのように見えてしまいますね。

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  2. みゆさんありがとうございます。
    頭の電気が点くというのは、見晴らしがよくなることです。一応マップが出来るというか。
    脳内と外界の両方の見晴らしのいいマップを手に入れること。
    そんな感じ。

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