2010/05/02

去り際の一言

The last statement a patient makes as you leave the room is very important.
病室を後にしようとあなたが立ち上がった時に患者が発する最後の言葉に気を付けなさい。

Listen carefully when a patient prefaces a comment with, "This may not be important, but..."
患者が「たぶん関係ないと思うんですが・・」で語り始めた話に耳をそばだてなさい。


なぜ患者は最も大事なサインをきまって診察室をあとにする直前に発するのだろう。
その理由を考えてみました。

僕たちは日々、脳が創り出すお話の中を生きている。
でもナマの現実はお話とは無関係な出来事から成り立っているので
自分に都合の悪いものは無意識の納屋にどんどん放り込まれていく。
山積みになった不都合な現実は納屋からあふれ出し、やがて悪臭を放ち出す。

無意識君は、現実を仕分けしてお話を作っている意識君に
「もう満杯で、何かマズイことがおこりそう。何とかしてもらえない?」
と相談を持ちかけた。

でも意識君はこれに全く耳を貸さず、バタンと意識の扉を閉じてしまった。
困った無意識君はなかよしのカラダ君に相談した。

「意識君は僕の言うことを全然聞いてくれないんだよ」
「うーん、そうかわかった。僕が何とかするよ」

カラダ君は意識君の言うことを聞かないという作戦に出た。

意識君「あれ?最近なんか、身体が重いな。
目もしょぼしょぼするし立ちくらみもする。
よし、根性で乗り切るぞ」

困ったカラダ君は次に痛みのロープを引いた。
だが驚いたことに意識君は何の反応もしない。
意識君は扉を閉じているので痛みを感じないのだ。

不都合な現実はその後も増え続け、やがてその中に病気が発生してきた。
さすがに意識君も何かがおかしいと感じて病院へ行った。

意識君は医者に今感じている身体の不調を自分で考えたお話に翻訳してしゃべる。
「最近つきあいで暴飲暴食が続いているせいか、なんとなく胃腸の調子が悪いんです」

医者「わかりました。消化薬と制酸剤を出しておきましょう」
意識君は納得し、帰ろうとして立ち上がりドアの方に向かう。
無意識君は慌てた。
せっかく病院まで来たのにこのまま帰ってしまったら大変だ。
無意識君はカラダ君に緊急警報を発令した。
「何とか意識君を思いとどまらせて!」
「わかった」。カラダ君は痛みのロープを思いっきり引っ張る。
痛みは固く閉ざされていた意識君の扉を激しく叩く。
ガンガンガンガン!

意識君は握っていた診察室のドアのノブから手を離し、振り向いてこう言った
「あ、そういえば最近背中のあたりが時々痛むんです」
医者「そうですか。じゃあ湿布も一緒に出しておきましょう」


えーと、これはつまり
「関係ないかもしれないけど、いちおう言っておいた方がいいかもしれない」
と患者が考えたことが、実は一番大事だったりするという話です。

何なんでしょうね。
つまりそれは意識が無意識の叫びに耳を傾けた瞬間なのでしょう。
部屋を出る瞬間に、意識は何となく何かを言い忘れたような気がする。
そしてそれを懸命に思い出そうとする。
そのときに無意識がカラダからの訴えを意識に届ける。
意識が自分のお話を話し終えてからでないと、無意識は登場できないのかもしれない。

僕たちはその声を聞き届けることが出来るだろうか。
意識と無意識の間にある扉はなかなか開かない。
そして抑圧されたものはその姿を変えて検問を突破し意識の表層に姿を現す(®内田樹師匠)。

タイトルをアフォリズムNo.4にしようかどうか悩んだんですが
今回からわかりやすいタイトルにすることにしました。



4 件のコメント:

  1. みゆ5/02/2010

     出口のドアノブに手をかけてから患者が言い始める言葉、、、、つまり、ドア・ノブ・コメントですね!

     ん~!これは刑事コロンボ的手法かも!
     「あともうひとつ、、、、」犯人はしかめ面・・・
     医師にとっては、終わったはずが終わっていない、、、、次に進めない、、、カルテは山積み、、、しかし、そこでその気持ちをねじ伏せてもう一度その人の方を見る(診る?)のですね☆
     苦しいけど、必要。でも、待合室では「いったいいつまで待たせんだ!」の怒鳴り声、、、受付カウンターを叩く音、、、う~、ジレンマです。しかし、粘るんですね!

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  2. >みゆさん。
    そうなんですよね。
    医者がドアノブコメントを無視するにはちゃんと理由があります。

    でも患者が出て行ってから医者の心に、

    というわずかなクエスチョンマークが残ることがあって、
    それが奥歯に挟まったように何となく気持ちが悪く、
    すぐに看護婦さんに「もう一度あの患者さんに診察室に入ってもらって」と頼んでお腹を触って
    それから検査、検査、検査、そして手術へ。
    なんてことや、
    すべての診察が終わって医局へ戻る途中にハタと気が付いて深く後悔することがあります。

    無数の意味のないドアノブコメントの中に、見のがすわけにいかないヒントが隠れていることがある。
    だからこの箴言がたまに(!)僕を踏みとどまらせてくれるかもしれません。

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  3. みゆ5/03/2010

     んん、そうですよねぇ。
     ドアノブまで行く前に何とかしないといけないのかもしれませんけど、それもまた難しいところがあります。患者さんは患者さんで、医師を「この無意識君の訴えを話すに足りるような医師かどうか」を計っているのかなぁと感じることもあります。悩むところですね。

     今日の月は、奈良市内の新しいケーキ屋さん「空気ケーキ」の店名になっている空気ケーキに形が似ています☆

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  4. 空気ケーキ!
    ネットで見ました。フワフワしておいしそうですね!

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