2011/11/10

青春が老いる

今日お風呂に入りながら吉田拓郎の「結婚しようよ」を口ずさんでいるうちにふと気が付いたのは、
あの頃僕たちの周りには青春があふれていたということ。
それこそ右を向いても左を向いても青春だらけで、天動説とか地動説とかいう言葉があるけれども、
そんな言葉があるなら青春動説というか。あ、それだと青春が中心じゃないから青春中心説、
誰が何と言おうと世界は青春を中心にして回っている(®ガリレオ)という学説。

中学を卒業する頃には、さあ、いよいよ青春だ。青春まっただ中だというわけで、乗り遅れちゃいかん、
俺は青春なのか?そうなのか?どう青春なのだ?いややっぱり青春だ! えっ、君はまだ青春じゃないのか?それは恥ずかしいぞ!(笑)
なんていう時代だった。それはつまり当時はみんな青春という制服をそろって着ていたわけだ。
フォークとかロックとか歌謡曲もそうだったし、雑誌はもちろんテレビや映画に出てくる人たちもみんな青春を着ていた。

でもやがて青春もOIL じゃなくて老いる。
青春だった人たちも老いるけど、制服を脱がずに老いていくもんだから青春が老いる。
うーむ、青春がオイルというのはすごい言葉だ。オイルサーディンというのもあるけど
オイル缶に入った青春。

でももちろん青春としてもムザムザ老いるに任せる訳にはいかないので、いやオイラは絶対老いない、
こうなったら老いる前に死んでやるとばかりにずかずか死んでいった人も多いけど、
そんな勇気のないほとんどの人は青春を着たまま老いていく。
たぶん青春を脱ぐチャンスを失ったままズルズル来てしまったのだろう。
今はそんな人達が僕も含めてゴロゴロしている。

気持ちさえ若ければいつまでも青春だと言う人もいるけど、どう考えてもそれは無理だろう。
でも気の毒なのでだれも君の青春はもう終わりだとは言わない。
今の人は青春じゃないのでそのまま粛々と老いていくわけで、年をとってもしがみつく言葉がないのはちょっとうらやましい。


【追記】
僕には娘が一人いるけれども彼女たちの世代を見ていて思うのは彼らは青春を持っていないということ。
それは若さが無いという意味ではなくて、二本足でトコトコ歩く青春と並走していないという意味です。
つまり僕らの世代にはあってあたりまえだったものが彼女たちにはないようなのです。とても不思議。

一つの脳を一色に染め上げその存在を微塵も疑わないという信憑を仮に宗教と名付けるなら、
青春とはまさに僕らの世代の宗教だったのではないか。
そして「青春の門」(®五木寛之)に入るというのは、まさしく入信という行為であり、一度入ったらまず抜け出すことは不可能で、
だから青春という言葉が若さと不可分であるにもかかわらず年老いても辞めることが出来ないのはそれが背信行為だからなのだ。
そう。あれは宗教だったのだ。

とまぁそんなことにハタと気が付いて、それを文章化するに際してですね、ちょうど最近お風呂に持って入るのが
赤瀬川原平さんの「純文学の素」という本なんですが、原平さんの文体で書いてみたらどうなるだろうと思ってやってみました。

6 件のコメント:

  1. あの頃はテレビで青春ドラマが花盛りでした。
    学生時代は東京の美大で過ごしましたけど
    たぶん、直接的な影響は青春ドラマだったような気も。w
    ちなみに私はshinさんと歳が同じみたいです。

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  2. matsuさんありがとうございます。
    おー、matsuさんも同じ世代だったんですね。
    >たぶん、直接的な影響は青春ドラマだったような気も。
    はい。夜雨の中森田健作クンの「さらば涙と言おう」を大声で歌いながら自転車で塾に通っていたなんて口が裂けても言えません(笑)。
    ご返事が長くなったので本文に追記として記載しました。

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  3. こんばんは。
    青春についての考察、おもしろいです!!
    多忙につき読み逃げしようと思っていたのですが、ついつい引き込まれました。
    おもしろいのは罪ですねw
    >そんな勇気のないほとんどの人は青春を着たまま老いていく
    そうかあ、そうだったんだ^^
    私にとっての青春ドラマは金八先生ですかね…。
    それはともあれ、青春の思い出といえば、同級生男子のアホさとガキっぽさ(爆)
    身に覚えはないのですが現在の彼らに言わせると私は相当生意気な女子だったそうで、
    「当時は本当に怖かった、怖すぎた」と口々に私を化け物扱いします(汗)

    ところで、matsuさんもshinさんと同年代ということで、
    私が「知的でセンスよくて面白そう」と思った人は年齢不詳者を除いて、もれなく50代前半ということですねw
    それを思うと彼らに申し訳なかった…、一定の年齢になれば魅力的になるんだなと、
    男性全般の母になったような気分で、しみじみしています。
    本当にみなさん申し訳ありませんでしたと、
    当時の同級生男子に、この場をお借りしてお詫び申し上げますm(__)m

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  4. 追記の「二本足でトコトコ歩く青春と並走していない」
    なんか分かります。
    もう、みんなで同じ夢を一緒に見れない、祭りは終わったといった感覚でしょうか。
    ただ、タイトルから連想してしまったのは、
    全共闘運動(リアルタイムでは知りません)、オウム事件、3・11以後の世界
    でした。
    でも、個人的には、10代、20代で完全燃焼の青春を謳歌しなかったせいか、
    まだまだ、青春登り坂の途中って感じです(^_^;

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  5. cahier-bさんありがとうございます。
    たしかに僕が学生だった頃も女生徒は僕達男子生徒よりも大人びていたし
    男子生徒をちょっと小馬鹿にしたような感じがありました。
    どうも脳科学でもこのサイト(←リンクあり)に書いてあるように
    女性の脳のほうが男性の脳より早熟で言葉が早く頭の回転も速いようです。
    もし50歳を過ぎた男性が多少ともまともになっているとしたら社会の荒波で揉まれているせいかもしれません(笑)。

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  6. soltylifeさんありがとうございます。
    >個人的には、10代、20代で完全燃焼の青春を謳歌しなかった・・・
    僕より上の団塊世代の人たちは火炎瓶を投げたりゲバ棒を振り回したりして
    思う存分青春(?)を満喫されたと思いますが、僕の世代はその後なので高校に入っても
    その残り火と言うか、伝説を伝聞するだけの僕たちも生焼けの青春時代を送ったように思います。
    青春に純粋だった人たちはみんな若死にしてしまった。
    イスラム原理主義じゃないけど若さと青春は切り離せないという青春原理主義に殉教して自ら死を選んだような気がする。
    いわば青春という宗教の殉教者だったんだと思います。

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