2012/12/22

RZが来る。

R0011633

それはつまり中判カメラのNorita66でフィルムに抵抗がなくなってからだ。
星のように遠いハッセルがニワカに現実味を帯びてきたのは。
さらに例えばマミヤ67とかペンタックス67とかローライにも興味が湧いてきて
関係書籍を買い込んだりネットで調べたり。

最初に手を出したのがマミヤRZ67ProIIで、Sekorの50ミリと110ミリ、各々のフード、120と645のマガジン、
蛇腹フード、電磁レリーズとマニュアルとストラップ全部込みで7万円でどうだ!というカメラ屋の親父の口車に乗って
ホクホクしながら帰宅後電池を入れてみたら電子シャッターが下りないことに青くなり
補償なしで購入したことを深く深く後悔しながら翌日返品しに行ったら
二つ返事で引き取ってくれたのでやれやれと。

それでここは一番やっぱりハッセルだろう。4年前に何気に買ったカメラ・ライフVol.1がハッセル特集で
フィルムの装填の仕方などの記事が役に立つ日が来る可能性は万に一つもないと思っていたが
世の中何が起こるかわからないからと思って買ったこの本も何かの縁だったのだ、ついにその日がやってきたのだと
心に思い固めて、グーグルマップに大阪・神戸の中古カメラ屋の印をつけてうろうろ歩きまわり
日夜ハッセルの研究に余念なく、まだ買ってもいないのに使用上の注意まで暗記するばかりか
お風呂にまでハッセルの本を持ち込んで熟読し
周りの迷惑も顧みずなんの興味もない人にまでハッセルの歴史を吹聴するなど馬鹿の所業としかいいようがない。

ところが思い余っても物事は思い通りいくわけはなく
むしろ空回りした思いがつんのめってちぐはぐなことになるのも世の習いで
知識はどんどん増えるけれど眼鏡にかなった選択肢はむしろどんどん狭くなる。
そしてついに欲しいのに手に入らないという苦しさから逃れるために、
もうなんでもいいや、と戸板をひっくり返すような暴挙に出た。
修理不能のとんでもハッセルをeBayで買ってしまったのだ(やれやれ・・・)。

このハッセルは部品用の名目で下取りに出してふりだしに戻り
やはり信頼出来る店で買うのが一番と目星をつけた店に通いつめたが、今度は店の主人と反りが合わない。
こちらは買いたくてウズウズしているのに売ってくれない。
自分の納得のいかないものは売れないとは、若いのになかなか見上げた親父だ。
うーむ、しかしそれにしてもどうもこれはやはりハッセルとは縁がないということではないのか。

などということをぼんやり考えながら最初に買いそこねたマミヤ67のことを思い出す。
あの時は危うく不埒な買い物をするところだったと安堵したものの、
しかし印象的だったのが、普通のカメラはヘリコイドでフォーカスを合わすのに
マミヤ67は本体の横に付いたダイヤルを回すとレンズが蛇腹で前方に繰り出していくという仕組みで
そういう機構のことをラック&ピニオンという。
ちなみにこのラック&ピニオンというのは、丸ギア(pinion)と平ギア(rack)の組み合わせで回転運動を平行運動に変える機構のことで
例えば普通の車のステアリングはラック&ピニオンだけど、ベンツはステアリングフィールを重視して
オリジナルのリサーキュレーティングボール方式を採用していたというのは、まあどっちでもいい話。

さてそのマミヤの繰り出し方が尋常じゃないのだ。
ビックリするほどどんどんレンズが前方に伸びていく。つまり、
標準レンズがそのままマクロとして使えるという店員さんの説明にひどく驚いた。
なるほど、たしかにカメラとしては大きくなるけどなかなかおもしろい工夫だ。
さらにカメラ本体ではなくマガジンをくるりと90度回転するだけで縦長写真が撮れて、
また90度回すと横長写真に戻れるという機構もとても便利。
本体の側面にレンズの繰り出しによる距離目盛と露出倍数目盛グラフが表示してあったり
(これは計算するのがとても面倒なので繰り出し量で自動的に露出倍数がわかるのはすばらしい工夫!)
さらに撮影時に置き場に困ってなくしたりするマガジンスライドを挿しこむ隙間がしつらえてあったり
不注意な操作をするとシャッターが降りない幾つものフェイルセーフが設けてあったり
基本的にこのカメラに込められた様々な工夫は
どれもこれもなんだか江戸時代のからくり細工じみていて面白くかつ発想が痛快で
これを作った間宮精一というひとの人柄が偲ばれる。
実際努力家で頭脳発明でイノベイティブなひとだったらしい。

それでマミヤ67で撮られた作例をFlickrでつらつら眺めてみる。
ここからは今まで以上に主観的になるのだが、
ハッセルで撮られた写真がどちらかというとウェットなのに対し
マミヤ67で取られた写真はドライな感じがする。
ドライというのは写真の質感のことを言っているのだが
マミヤの写真の表面は乾いているような印象を受ける。
あるいはハッセルの写真が現し世的であるのに対しマミヤの写真は何となく冥府的な感じがする。
そういった感じがどのようなファクターに関係があるのかはわからない。
おそらくプラナーとセコールというレンズの違いからくるのだろう。
そしてNorita66もハッセルほどではないが現し世的なものを感じる。

何を言いたいかというと、ハッセルやノリタはやはりスナップな側面があって
日常をすくい取る道具というか、そこはかとない風情をすくい取る道具という、
これは僕の中での位置づけなのだが、マミヤはどちらかと言うと彼岸的。
どうせ僕はスナップには向いてないのだから
日常の中に潜む彼岸を見つめるにはマミヤのほうが似合ってるんじゃないかと。
それで今日新同品のマミヤRZ67ProIIをネットで注文した言い訳を長々と書いてみた。

8 件のコメント:

  1. おお〜こないだ飽きたって言ってたのに流石ですね!
    楽しみです!!

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  2. wataponzさんありがとうございます。
    悩みに悩んだ末にようやく結論を出しました。
    あとは吉と出るか凶と出るか(笑)。

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  3. 驚いた…
    てっきりヤマハかと思ってしまいました。

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  4. >chinさん
    見た目はバイクというより耕運機です^^。

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  5. ぱんだぱん12/25/2012

    RB/RZと使ってましたが、マミヤの67はじっくり撮るには良い機材ですね。
    私は重いので手放してしまいましたが。

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  6. ぱんだぱんさんありがとうございます。
    まだしばらく写真を撮りに行けそうもないんですが
    ルーペで正確にピントを合わせるために顔の高さまでカメラを持ち上げた状態を維持すると
    カメラを支えている左手にかなり応えますね。
    セコールZ 110mm+フィルムホルダー+本体で2.5キロ
    仮にAEプリズムファインダー940gを乗せると3.4キロですもんね(笑)。。

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  7. ぱんだぱん12/27/2012

    更にレンズ三本、フィルムフォルダー数個、ジャバラフード、接写リング、CCフィルター、三脚、色温度計、etcをアルミトランクに詰め込むと・・・・・

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  8. ぱんだぱんさんがRB/RZを手放すことになったわけがわかるような気がします^^。

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