昨日の朝日新聞週末別冊版beで磯田道史さんは江戸後期の儒学者佐藤一斎の言葉を紹介していた。
佐藤一斎は生徒三千人を抱える江戸期最大の教育者で、西郷隆盛も彼の著「言志録」を座右の書としたという。
その彼が学問と教育について次のような言葉を残している。
「学を為(な)すには、人の之(こ)れを強(し)うるを俟(ま)たず。必ずや心に感興する所あって之を為す」
(学びというのは強制ではなく、興味によって発動するものだ)
ではどうすれば生徒に興味を持たせることが出来るだろうか。
「我れ自ら感じて、而(しか)る後に人之れに感ず」
(何かを教えようと思ったら、まずあなた自らが感動することだ。生徒はあなたの感動に感動するのだ)
それが芸術であれ教育であれ、何かを人に伝える仕事をしているものにとって、大切なことはなんだろうか。
送り手が震える手で贈り物を手渡す。
受け手は震える手で贈り物を受け取る。
受け手は次に送り手となり
次の受け手に震える手で贈り物を手渡す。
私たちが伝えているのは、じつは物や情報ではなくて、「振動」なのかもしれない。
だからあなたが何かを伝えたいと思ったら、必然的にあなたは震えているだろうし、何かを受け取る人は送り手の振動に共鳴する。
だからあなたが職業として何かを伝える仕事をしているなら、あなたは震えていなくてはならない。
もしあなたが震えていなければ、あなたが手渡す物は受け手には届かないだろう。
すごく美しくて、すごく上手なのに伝わらないものがある。
それは震えているだろうか。
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