2011/04/16

シュレーディンガーの猫

なるほど彼は波の関数で
エルヴィン(シュレーディンガー)は何でも計算する
人が知りたがっているのはただ
そのとき心に何を描くかだ。
(当時のチューリッヒの物理学者たちがシュレーディンガーに寄せて歌った詩。「近代物理の発想II」講談社より)


科学くん「いやー、今日は驚いたね!」
文学くん「どうしたの?」
科学くん「シュレーディンガーの猫ってほんとにいたんだね!」
文学くん「その、シュレなんとかさんもさぞかし喜んでるだろうけど、お知り合い?」
科学くん「いや、直接の面識はないんだけど、すごくえらいひと」

文学くん「どんなふうに?」
科学くん「物質は波と考えたほうがわかりやすいっていう方程式を考えた」
文学くん「いま波の話は聞きたくないな。猫を飼ってたの?」
科学くん「普通のねこじゃなくて化け猫の一種」
文学くん「・・・・」

科学くん「ハイゼンベルクの不確定性原理とか」
文学くん「えーと、たしか真っ暗闇だと粒子がどこにあるかわからないけど」
科学くん「光を当てると粒子が見える」
文学くん「くわしく粒子の位置を確かめようとしたら強い光を当てないといけないけど」
科学くん「強い光をあてるとその光のエネルギーで粒子が動いてしまって粒子の位置が分からなくなっちゃう」
文学くん「弱い光だと粒子の位置がよく見えない」
科学くん「つまり粒子が存在する位置は確率では分かるけど、確定はできないと」
文学くん「ジレンマだね。別にいいじゃない。粒子がどこにあろうと」
科学くん「科学者はそれが許せない。どうして確定できないんだ。確定できるはずだ!」
文学くん「興奮しちゃって」
科学くん「プンプン」

文学くん「で、シュレちゃんも怒ったわけだ」
科学くん「そう。自分で方程式を作っておいて、確定できないことにむかっ腹を立てた」
文学くん「それと猫とどういう関係が?」
科学くん「話せば長いんだけど」
文学くん「だいじょぶ。誰も読んでないから」
科学くん「zzzz」
文学くん「居眠り?」
科学くん「長い話をするための深呼吸」
文学くん「どうぞ」

科学くん「シュレちゃんは考えた。『粒子の存在が確率なワケがない!』」
文学くん「はぁ。いいじゃない。粒子ぐらいあってもなかっても」
科学くん「粒子が確率なら、おいらの猫も確率か!?」
文学くん「何を言い出すのやら」
科学くん「たとえばだね、粒子が崩壊して放射線をだしてだね」
文学くん「放射線の話は今は聞きたくないな」
科学くん「その放射線をガイガーカウンターで測定してだね」
文学くん「ガイガーカウンターの話も今は聞きたくないな」
科学くん「ガイガーカウンターが放射線をキャッチしてガガガと鳴ったら」
文学くん「怖い!」
科学くん「ハンマーが青酸カリの瓶を割って猫が死ぬ」
文学くん「きゃー」
科学くん「そういう箱を作る」
文学くん「ヒドイ話」

科学くん「ということはだよ」
文学くん「ほう」
科学くん「粒子が崩壊する確率は箱の中の猫が死ぬ確率と同じだろ?」
文学くん「まあ、そう言えなくもないが」
科学くん「粒子が崩壊する確率が50%なら猫が生きている確率も50%」
文学くん「いいのかな。そんな事言って」
科学くん「言っちゃう」
文学くん「それで?」
科学くん「箱を開けてみる」
文学くん「きゃー」
科学くん「死んでる」
文学くん「あーあ」
科学くん「さっきまで50%生きてたのに今は100%死んでる」
文学くん「まあ、そうだわな」

科学くん「変だ」
文学くん「何が?」
科学くん「箱を開けなくてもすでに100%死んでたはずだ」
文学くん「そうだけど」
科学くん「そもそも50%生きてたというのがおかしい」
文学くん「50%だけ生きてると思ってたの?」
科学くん「いや思ってない」
文学くん「どっちなんだよ」
科学くん「でも計算によれば彼は箱の中で50%生きてた」
文学くん「?」
科学くん「粒子の存在が確率なら、猫の存在も確率だ。彼は箱の中で半分だけ生きていたんだー!」
文学くん「落ち着くんだ」
科学くん「半分だけ生きていた!化けネコだー」
文学くん「困ったな」
科学くん「だからね。計算では確率だけど、実際には確定のはずだろ?」
文学くん「シュレちゃんは自分で導き出した式だと存在というものが確率でしか表現できないことに悩んだわけだね」
科学くん「はい」

文学くん「科学者というのはね」
科学くん「へーい」
文学くん「理論で世界を記述したいわけだ」
科学くん「うん」
文学くん「でも世界の記述と世界とは必ずしも一致しないだろ?」
科学くん「一致させたいけど」
文学くん「一致してると思ってるでしょ」
科学くん「そういう面もある」
文学くん「だから粒子の存在を確率でしか記述できないと、確率的にしか存在してないと思っちゃう」
科学くん「意味わかんね」
文学くん「50%の存在確率は、半分透けた猫がいると思ってるだろ」
科学くん「違うの?」
文学くん「頭がイイのか悪いのか」

科学くん「でもね、昨日発表があったんだよ」
文学くん「何の?」
科学くん「ヒヒヒ。いたんだよ」
文学くん「何が」
科学くん「化けネコが」
文学くん「?」
科学くん「ばーん!!」
『東京大学の古澤教授、シュレーディンガー猫状態の光パルスの量子テレポーテーションに成功』

文学くん「ええと、どういうことでしょ」
科学くん「シュレーディンガーの猫は2匹でペアだった」
文学くん「1匹じゃなかったんだ」
科学くん「2匹でペア」
文学くん「びゅーてぃぺあ~♪」
科学くん「びゅーてぃびゅーてぃ~♪」
文学くん「びゅーてぃぺあ~♪」
科学くん「エヘン(咳払い)」
文学くん「はい」
科学くん「で、この2匹は半分スケスケでそれぞれ存在して」
文学くん「よくそんなことが!」
科学くん「一方の箱を開けて生きてたら、もう一方の箱は開けなくても中で死んでいるに決まっていると」
文学くん「何を言ってるのやら」
科学くん「いや、そういう運命のペア」
文学くん「びゅーてぃぺあ~」
科学くん「エヘン」
文学くん「あ」
科学くん「そういう運命のペアを東大は作って」
文学くん「神か!」
科学くん「その箱を別々の場所に置くことに成功したと」
文学くん「まゆつば」
科学くん「えーと、この文章を書いている人」
文学くん「shinさん」
科学くん「は、素人なので嘘を言っているかもしれませんご用心を」
文学くん「本人は悪気はないんですが間違ってるかもしれません。ご容赦を」
科学くん「続けます」
文学くん「続くんだね」
科学くん「さて、別々の場所に置くとどうなるか」
文学くん「さてお立会い!ばばんばん!」
科学くん「大阪で箱を開けたら東京の箱の中身がわかる」
文学くん「フムフム」
科学くん「箱を並べて順番に開けたら開けると同時に東京の箱の中身がわかる」
文学くん「電話で聞かなくても」
科学くん「情報の伝達速度が半端じゃない」
文学くん「何しろ同時だもんね」
科学くん「光より速い」
文学くん「なるほど」
科学くん「異常な速さ」
文学くん「くどい」
科学くん「これでコンピューターを作ったら計算速すぎ」
文学くん「量子コンピューター」
科学くん「なんだ、知ってたの?」
文学くん「エヘッ」
科学くん「テレるかね」

文学くん「えーと、つまりシュレーディンガーの猫はいた!っちゅうわけ?」
科学くん「少なくともその理屈で物事は進んでるようね」
文学くん「ということは僕らも確率で存在してるってこと?」
科学くん「君、ちょっと透けてるけど」
文学くん「え、ウソ!」
科学くん「箱を開けて僕が生きてたら」
文学くん「びゅーてぃぺあ~♪ はー、さいならー」



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8 件のコメント:

  1. 弟子「shinさん、また訳の分からないこと言ってますが...」
    神様「病気やな。時々発作がでるんじゃ」
    弟子「神さんは、shinさんの言うてること、わかりまっしゃろか?」
    神様「こら〜!わしを誰と思うとるんじゃ!神さんやで!」
    弟子「そしたら、猿にも分かるよーに説明してください」
    神様「要はじゃな、とりあえず最後の方を読んだらよろし」
    弟子「えっと、びゅーてぃぺあ〜!と叫んでます」
    神様「あほっ、あの男は絵に描いたようなおっさんじゃ。例えが古すぎる」
    弟子「なら?」
    神様「いくよくるよ...とか」
    弟子「神さん.....。もう、いいですから説明を」
    神様「簡単じゃ、理論はとーだいのセンセにまかせてじゃな、
       要はスゲー、コンピュータができるかもしれんということや」
    弟子「スゲーって、どのくらい?」
    神様「モノスゲー。ギガスゲー!」
    弟子「いきなりショコタンかい。神様レベルのコンピュータって事でっか?」
    神様「そうじゃ」
    弟子「そないなったら、神様は?」
    神様「大丈夫、マイフレンド!この国には八百万の神さんがいるんや!
       一人ぐらい増えたところで、どーってことないんや、わからんのか!」
    弟子「もう、わややがな」

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  2. t-s-wegnerさんありがとうございます。まいどお騒がせしています。
    時々こういった科学物を書きたくなるんですが
    何しろ素人なのでいわゆるこんにゃく問答になってしまいます。
    華麗にスルーしてください(笑)。

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  3. おはようございます^^
    ほんとにもう、おふたりとも笑わせてくださってありがとうございますw
    神さん(爆)も、wegnerさんも、面白すぎです!

    文学くんと科学くんの名前が交互に出てきて、まるで「1」と「0」が整然と並んだコンピュータの世界みたいですね。
    >大阪で箱を開けたら東京の箱の中身がわかる
    東京から「死んでいるネコと生きているネコ」をセットにして大阪に送るというのは「1」と「0」とを片方ずつではなくて
    セットで同時に送れるということでしょうか??
    >光より速い
    ということは鏡で自分の顔を見るよりも早い???
    もうこのへんから良く分からなくなってますが、自分の顔を即座に認識する必要はないので
    できれば思い通りに変換して自分にも他人にも見えるようにしていただけると助かります!!

    >科学くん「テレるかね」
    あの、すみません…、これは「お△じギャグでしょうか」(爆)
    すみません、「華麗にスルー」できなくて^^;

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  4. bouquet-nさんありがとうございます。
    えーと、これはですね。皆さん自由に解釈していただいてですね。ええ。ほんとに。
    僕自身はずっと気になっていたけど明確なイメージを掴めなかったシュレちゃんの猫について
    今回の東大の発表をきっかけに何が僕の中で引っかかっていたのかを自分の中で整理するために書いたものです。
    量子というアイデアが導入された頃からですよ。極微や無限遠や初源を記述しようという試みが
    記述者の立脚点を巻き込もうとすることに物理学者たちが気づいてそれに抗いつつも巻き込まれていく事態に立ち至ったのが。
    いやまったく。

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  5. shinさん、申し訳ありません m(__)m
    少々、度が過ぎておりました。反省。
    茶々を入れるつもりはなかったんですが...。
    よく読めば、深すぎる内容です。
    ほんと神の領域に入り込むようであります。

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  6. t-s-wegnerさんありがとうございます。
    このニュースには興奮しました。日本の科学者がシュレーディンガーの猫のパラドックスを
    パラドックスのまま肯定してしまった実験です。
    こうやって科学は進んでいくんだなぁ。
    ただの門外漢ですけど(笑)。

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  7. とかげ4/18/2011

    おもしろい!
    これ、「海原かがくぶんがく」というコンビ名で誰か喋りにきてくれたら絶対聴きにいきますよ。

    よくわかりました。(ホントー?)

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  8. とかげさんありがとうございます。
    いいですね!海原兄弟!
    「はーい、皆さんこんにちは!海原かがくです」
    「海原ぶんがくです!」
    「ところでぶんがくくん、きみ最近ダイエット始めたそやないか」
    「よう聞いてくれはった。とっても大事にしてたのに壊れて出ない音があるんです」
    「それはクラリネットでしょ。僕が聞いてるのは」
    「はいはい、真っ暗な部屋で触ってもいない人形が踊り出す」
    「それはマリオネット。僕が聞きたいのは」
    「あー、辛抱たまらん!漏らしそうやー!」
    「トイレット、やなくてやねー」
    「頭上注意!工事現場では必ずかぶろう」
    「ヘルメット」

    きりがないですね。
    シュレーディンガーの猫は僕の頭の中で対話していたのはおぎやはぎでした。
    ぜひおぎやはぎの声で再生お願いします。

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