まず鏡に写った像を見て「なぜ左右だけが反転するのか」という疑問が生じるためには「鏡の中の像と合体しようとする行為」が必要です。
鏡に写った像は自分とそっくりです。
実際同じかどうかを確かめるには合体すればよいわけです。
まず左右を認識しやすいために右手にリンゴを持っているところを想像して下さい。
そしてリンゴを持ったまま歩いて鏡の向こうに回りこんで鏡の像と合体してみましょう。(実際に合体するわけではありません。合体を試みる自分を鏡のこちらから見ているわけです)。
すると鏡の向こう側に回り込んだ想像上の私と鏡に映っている私はリンゴを持っている手が逆になっています。合体しようとしても左右が逆だから合体できない!という事態です。このとき私の上下と前後は合っているのに左右が逆になっています。
まず鏡を前に立って右手にリンゴを持ったままぴょんぴょんジャンプしてみてください。そうです。もっと高く、もっと元気よく!
いいですね!そしたらそのまま前のめりに鏡を飛び越えて頭から真っ逆さまに自分の像の中に飛び込んで合体して下さい!
すると飛び込んだ私と鏡に映っている私はどちらも同じ側にリンゴを持っています。そして顔の向きもこちらを向いています。しかし私は上下が逆になっているので合体できません。つまりこの場合左右と前後は合っていますが上下が逆になっているわけです。
では次にもうひとつ別の合体方法をやってみましょう。
あなたは鏡の前に立って鏡の中のあなたを見ています。
そのまま前に進んで鏡を通り抜けて鏡の中の私と合体して下さい。
このとき鏡を通り抜けた私と鏡に映っている私はともに同じ側にリンゴを持っており、上下も同じなのですが、前後が逆になっているので合体できないのがわかるでしょうか。
まとめです。一番目の方法は左右だけが反転する
二番目の方法は上下だけが反転する
三番目の方法は前後だけが反転する
結論です。
鏡は左右だけが反転するのではない。
前後・左右・上下のどれか一つが反転するが
そのどれが反転するかは主体がどういう合体方法を選ぶかで決まる。
ということですね。
そして私達のほとんどは合体するときごく自然に一番目の方法を採用するので、「なぜいつも左右だけが逆になるんだ」と考えますが、高飛び込みの選手は「なぜいつも上下だけが逆になるんだ」と文句を言い、壁抜けの超能力者は「なぜいつも前後だけが逆になるんだ」と文句をいうのは、したがって仕方のないことなのです。