2019/04/23

時計雑感

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Fuji X100F

タグ・ホイヤー用に買ったNATOタイプのストラップが届いたので装着してみた。
この時計は1985年製造のTAG HEUER 2000 Professionalという機種で、僕がこの時計を買ったのは病院勤務1年目。心斎橋かどこかの時計店で、新婚ホヤホヤの妻と一緒のときに勢いで買ったものだ。この時計とはもう30年の付き合いで、結婚記念の時計と言えなくもない。

僕が退職したのはパネライを買ってしばらくしてからだ。
数少ない僕の時計購入歴のうち、奇しくもタグが仕事開始時、パネが仕事終了時だった。
言い換えれば、タグは僕が私人から公人へ移行する時期の象徴であり、パネは公人から私人に戻る時期の象徴だったことになる。
秒針もカレンダーもない手巻きのパネライは公人の職を解かれたことの象徴だろうか。

ひとは環境の変化で時間の捉え方が変わる。
その、時間の捉え方の変化が僕の場合新しい時計の購入につながっているようだ。
とすると、長い間放置して電池切れだったタグに新しい電池を入れて新しいバンドでまた使ってみようと思ったのは、またなんとなく公人に戻りたいと思っているからだろうか。

入院して寝たきりになった高齢者に時計をもたせることの大切さは医療人の間でよく知られている。
時計を持つというのは、社会と自分が共通のスケールを持つということであり、それによって患者はかろうじて社会性を維持することができる。
それによって患者は、深く底なしの個人的妄想の闇に落ち込まずにすむ。

時計なんて時間がわかればいいのだからスマホでも百均時計でもいいじゃないかという考えもある。
時間を知る機能としての側面だけならそれでもいいが、時計はまたそのひとの社会とのつながりの要であったり記憶や人生の転換期に象徴的な働きをしたりすることを思えば、持ち主の思い入れを受け止めてくれる姿形をしていて欲しいと望むのも尤もなことだろう。




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Fuji X100F





















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