トーン。
普段何気なく使っているのにいざ面と向かってその意味を問われると言葉に窮してしまうもののひとつ。
写真クラブなどで他のメンバーの写真に感想を述べるときに「トーンがいいですね」とか「この写真の持つ独特のトーンが好きです」といったふうに、これはよく使う言葉なのだ。
トーンというのは一般的に、というか僕の中では「ムード」という言葉のイメージに近い。音や楽曲、絵画や写真などで、それを見たり聞いたりしたときに心の中に生まれる独特の感覚。
悲しい、寂しい、寒い、暖かい、嬉しい。いや、もっと微妙なもの、言葉にならない雰囲気、ムード。音楽で言えばある種の楽曲のある種の和音の連続が心という湖面に静かなさざなみを生み出すことがある。ああ、この感覚。とても言葉では言い表せないが心の中に生まれる特異な振動のようなもの。
いやいや、これではちっとも明らかにならないですよね。
以前フォトマスター検定の勉強をしたときにフォト検の公式テキストのLesson34 「光と色」のセクションを勉強しながらテキストに載っていないいわゆるトーンについてネットで調べていてだんだんわかってきたことがある。
まずあなたはどこに住んでいますかと聞かれたときに我々は何県の何町の何丁目の何番地に住んでいますと答える。そう答えることでこの広い地球上の一点を特定することが出来る。
色の場合も無数にある色を、色相(色の種類)と明度(色の明るさ)と彩度(色の純度)の三種類の番地で特定することが可能なのだ。
例えば上図のこの色を指定したければまず色相で赤を選び、次に明度を選び、最後に彩度を選べばこの色に到達することが出来る。
で、トーンというのは「明度と彩度の比率を揃えた色の調子のこと」なのだと(詳しくはこちらのサイト(リンク)を参照)。
どういうことかというと、まず色相(色の種類)は何でも構わない。その色相、例えば青を選んだときにそれを好みの青にするために明度を明るく(例えば10段階の8)、彩度を低め(例えば10段階の2)にする。
そしてその写真の他の色、例えば黄色や赤も、青の明度と彩度と同じにすると、その写真は全体の明度と彩度が統一されたある特定のトーンになる。
具体的には上図のライトグレイッシュというのが今回指定したトーンだ。
このライトグレイッシュを見ると、青や赤や黄色や緑といった各色相が、明度は明るめで彩度が低めに統一されていることがわかる。
そして例えば写真においても各色がこのライトグレイッシュで統一されていると、写真全体がライトグレイッシュなトーンなる。
ただし写真のレタッチでは各色の明度と彩度を個別に調整するわけではない。
例えばPhotoshopでは
露光量で全体の明度を、彩度で全体の彩度を変えることが出来るので、知らないうちに僕達は特定のトーンを選んでいることになる(色相はホワイトバランスや色温度や色被り補正で変えられる)。なお特定の色相だけ明度と彩度を変えることが出来るがやりすぎるとトーンが崩れてしまう。
ちなみに今フジのクラシッククロームというフィルムシミュレーションが流行りだが、これは明度はいじらず意図的に青以外の彩度を落とし(緑の彩度はやや高め?)、暗部のコントラストを上げてシネマっぽいトーンに仕上げている気がする。いや個人的な感想です。
ここで蛇足。トーンとは、彩度と明度が同じ色相群のことである。
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