2011/12/20

女性名詞としてのアップル

Macintosh

僕が興味があるのは彼が実際にはどんな人間だったかではありません。
等しく彼の死を惜しむものの一人として僕が知りたいのは
「私たちは彼の何を愛惜しているのか」なのです。

彼が創りだしたものはとても使いやすい。
でもおそらく彼が目指したのは使いやすさそのものではなくて
むしろ使うことの快感だったのではないか。
それは用事がなくても使いたくなってしまうようなタイプの快感です。

彼が創りだしたものに共通する特徴を挙げてみましょう。
見た目がlovelyで
手ざわりがsexyで
アイデアがsmart。
そのインターフェイスの身体性において彼は優れて女性的です。

あるパーティーで彼の成功を誉めそやす人に対し
「僕がやったことではなく、僕がやらなかったことをこそ評価して欲しい」と言ったそうです。
なぜ彼の「ノー」はブレなかったのでしょうか。

それはたぶん理屈のノーではなかったからではないか。
嫌いなモノを好きと言えない生理的反応はブレることはありません。
復帰したアップルの既存の方針に大きな☓をつけ
新製品のプロトタイプを水の入ったコップに放り込み
アップル社のエントランスに飾ってあった生花に「この犬のクソをかたづけろ!」と言い放つ。
それは醜いものを生理的に嫌悪する女性を連想させます。
それは「駄目だ」のノーではなく、おそらく「きらいだ」のノーでしょう。
女性が使うのと同じ「ノー」。

そういう目で見るとIBMやマイクロソフトの開発思想はとても男性的です。
そしてたぶん彼はそのような無味乾燥な電子産業に
愛すべき女性性を初めて導入した人だったのではないでしょうか。

リンゴは女性の乳房の暗喩として有名だし
appleという音はnippleを連想させるし
それに何と言ってもフランス語のpommeは女性名詞だしね。

Abe

2 件のコメント:

  1. こんばんは。
    いつもながら楽しいですね、shinさんの恋バナ^^
    なるほど…、キーワードはインターフェイスにおける女性性、自己表現における女性性なのですね。
    私はmacユーザーではないですが、なんとなく伝わってくるものがあります。

    >あなたの隣にいる女性が使うのと同じ「ノー」である
    これはもう、羨ましいです。
    私も「嫌いだからノーなの!」って言ってみたい…。
    若い頃ならともかく、今は言えないです。
    「ノー」と言い放つことよりも、どうして自分は嫌いだと思うのかその理由を積み上げていく方が楽しいです。
    これじゃ女性性の欠如ですよね。
    そんなわけで、ワクワクさせられなくて申し訳ないです(大爆)
    そのうち、「ノーだからノーなの!」とか訳もなく叫んでみます~^^
    この場合ドキドキというより、動悸息切れで心臓に悪い…、ってヤツですねw
    大丈夫です。長生きしてほしいので、そんなことはしませんから。

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  2. ユング心理学エバンジェリストの河合隼雄さんが何かの本の中で
    自らの内なる女性性(アニマ)が顕在化している男性には特有の雰囲気があり
    魅力的であると述べていたように思います。
    電子産業というのは鉄道やカメラと同様その出自からして極度の男性性を帯びた世界ですが
    彼はそこにアニマを持ち込んだことによって圧倒的な魅力を獲得したのではないか。
    砂漠のように乾燥した世界の中の、みずみずしい柔らかな緑の若木。

    逆にbouquet-nさんがとても魅力的なのはbouquet-nさんが無意識のうちに
    内なる男性性(アニムス)を顕在化させているせいかもしれませんよ(^_^)。

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