2007/12/16

ごく微量で効く薬


ある程度の量を長期間服用しなければ効かない薬がある一方で、ごく少量ですぐに効果を現す薬がある。
これはどうしてだろうか。
機能不全に陥った生体に何かを補充することによって機能回復を図る場合、補充するものは大きく分けると2種類あるように思う。
それは物資と情報である。
ご飯を食べなければ動けないように、生体には機能を存続させるために必要な物資がある。この場合補充する物資の有用性には用量依存性がある。
一方、情報にも量としての情報と、刺激としての情報がある。
量としての情報はある程度の量が投与されないと情報として作動しない。
これに対し刺激としての情報はある種のヒントのようなもので、ごく微量の投与だけで不活化していた生体内のシステムを作動させることが出来る。
武道家の育成に当てはめて考えると、物資の補充というのは筋肉をつけるためにもりもり食べることに相当する。
ある程度の量が投与されないと作動しない「量としての情報」は、新しい技を習得するために繰り返し練習をすることに相当する。
師匠のたった一つの言葉が行き詰まっていた弟子の身体の動きを大きく変える場合がある。これがヒントとしての情報である。
私達は往々にして全ての薬が用量依存性だと考えているが、いまこの目の前にある生体のとって必要なのは物資の補充なのか、量としての情報なのか、ヒントとしての情報なのかを考える必要がある。
蛋白質の多くは消化管内の酸や酵素により抗原性を失う。その一方で小腸粘膜のM細胞は抗原性を残したまま物質を積極的に取り込んでいることが知られている。これはあくまで防御機構の話だが、生体にとって有用な物質を大分子のまま取り込むシステムの存在を想定することは無意味ではないだろう。

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