2020/12/26

橋本治の恵み


#84



令和2年12月26日(土)
今読んでいるのは橋本治の「小林秀雄の恵み」と「ひらがな日本美術史第4巻」。
どちらもすでに絶版だが、特にひらがな日本美術史は1~7巻のうち第5巻は絶版中の絶版で、新潮社に再販のメールを出したが返事はなく某サイトで奇跡的に見つけてようやく全巻揃えることができた。

小林秀雄の恵みもひらがな日本美術史もどちらもすごく面白い。つくづく橋本治はこんがらがったヒモを解く名人だなと思う。まだ途中までしか読んでいないが、特に前者ではあざやかにヒモを解いたあと、なぜそれほどまでにこんがらがってしまったのかを丹念に辿っていくという道程がすなわち小林秀雄に対する尊敬と愛情の道程でもあって、それが本の題名になっている。

ゆうべ夜中に橋本治がどうして巨額の借金をしていたのか知りたくなって寝床でiPhoneで調べてみたら、バブル崩壊の直前に41歳の彼は1億8000万円のマンションをローンで買って(買わされて?)、亡くなる70歳で完済するまで毎月百万円の返済をしていたため返済総額は5億円にのぼるほどだったことや、担わされたマンションの管理組合理事長の重責によるストレスからか62歳で難病の顕微鏡的多発血管炎(MPA)に罹患して狭心症や腎不全も合併しカリニ肺炎にも罹患していたことや、亡くなる1年前に上顎洞癌の手術も受けていたことを知った。

名著も多いがとっちらかった内容の本も混交しているのは文字通り自転車操業を余儀なくされていた事情もあるだろうが、彼自身も述懐しているように仮に借金していなくても生涯著作を量産し続ける人生だったろう。読者にとってそれは文字通り「橋本治の恵み」であり、いわば彼は爆走するソリからプレゼントを撒き散らしながら去っていく病気と借金まみれのサンタクロースだった。
遅まきながらメリークリスマス。







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