2011/10/15

ドット抜け顛末記

dust


D700を購入した時から撮像画面の右側に微小な黒点があるのが気になっていた。
その都度レタッチソフトで黒点を除去していたのだが、今日は時間があるのでソフト処理をしてもらうためにニコンのサービスセンターへ行った。

僕がその黒点を撮像素子に付いたゴミではなくドット抜けだと思ったのは、レンズ交換を何度も繰り返す前の最初の数ショットですでにその黒点があったからだ。

カメラの再生画面を見せて来店の趣旨を説明する。
係の女性は画面を見て、ドット抜けの場合は黒点がもっとクッキリと出るはずで、この周囲がややぼやけたような感じはおそらくローパスフィルターに付着したゴミであろうと。

やがて彼女はバッテリーの抜き差しが異様に硬いことに気付いて怪訝な表情でカメラをあれこれ触っている。
それで僕が、それは買った時からでバッテリーが落ちないようにそういう仕様になっているのだろうと思い自分でセロテープの取っ手をつけたのだと説明した。
彼女は「わかりました。ではそれも調べておきます」と言って奥にカメラを持っていった。

1時間ほどかかるというので新発売のNikon V1とJ1を触らせてもらったあと展示されている写真を見て回っていると名前を呼ばれた。
カウンターの女性が言うには、バッテリーの引き抜きが硬いのはボディーが歪んでいるからで、それはマウントが歪んでいるためのようだが、どこかにぶつけたりはしなかったかという。
ぶつけていないし、バッテリーの引き抜きが硬いのは開封時からだと説明する。
再びD700のチェックが始まる。

しばらくして今度は男性の係の人から名前を呼ばれる。
ローパスフィルターは清掃しておきました。バヨネットマウントにガタが見つかりその歪みがボディーバックに及んでバッテリーの引き抜きが硬くなっていると思われますと。
実際にマウントの歪みチェックのためのリング状のプレートを当てて歪みがあることを見せてもらう。
このままだと撮像の左右に歪みが出るという。
今までの写真にもその現象が見られているはずと言われたが僕は気付いていなかった。
ただなんとなくピンの甘いカメラだなと思っていたがひょっとしてこれが原因だったのだろうか。

工料18,700円、部品代33,200円、税2,595円の合計54,495円かかるがどうなさいますかという。
バッテリーの引き抜きが硬いのは最初からだと説明しても、当社では出荷時に厳密なチェックをしているので初期不良とは考えられない。
したがって保証期間内であっても実費が発生するという。
マウントのガタはどの程度の衝撃で発生するのか聞いてみるとかなりな衝撃でないと発生しないという。ただ望遠レンズなどの長いレンズを付けてレンズの先端側方から強い力が加わった際などにマウントが歪むであろうと。

僕はドット抜けのためだけに出掛けてきたので、今この思いもよらぬ急展開と理不尽な事態にどうしても納得が行かず呆然とカウンター前に立って、それからもう一度僕の抱いている困惑を理解してもらおうと努力したが、やんわりとだがあくまで彼の主張は変わらなかった。

僕は肩を落とし深いため息とともに「わかりました」と答えた。
しかしまだ購入して1ヶ月。
特にぶつけた記憶もないのにカメラに不具合があるから五万四千円の修理代がかかるというのはどうしても気持ちの上で受け入れられない。

あとはここにすがるしかないと思い購入店に電話で事情を説明すると新品とお取り替えしますと。
今は箱も付属品も何もなく本体だけしかないと言ったら本体だけでも交換しますが箱の製品番号との不一致で売却の際に値段が下がるがそれでもよいかという。
それでもかまわない。日が変わって気が変わられても困るので電話を切ってすぐに店に行く。

担当の女性の対応はとてもスピーディーだった。新品のD700と取り替えてくれて帰り際に彼女は「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と言った。
恐縮してしまった。やはり精密機器は店舗で買うべきだと思う。
機嫌を良くした僕は三脚コーナーへ行きベルボンVS-443Qを見せてもらう。
通常24,800円が今日だけ特価で22,600円になっているという。
ジッツォのエクスプローラーや他のメーカーのも見せてもらったがベルボンが一番使い勝手がよさそうだ。
だいぶ悩んだが担当の男の子の印象が良かったのとカメラの問題が解決して気が晴れたせいかその場で購入を決意する。
商品を持ってきた彼は笑顔で「今日の最後の1本でしたよ」と。ホントかな(笑)。

ドット抜けを治してもらうだけのつもりで出かけたというのに何という展開だろう。
カメラが新しくなったのはうれしいが、狐につままれたような気持ちで帰宅する。
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夕べこの日中に起きた出来事を書きあげてブログにアップしたわけだけれど、朝起きてからこのままだとちょっと誤解を招いてしまう可能性があると思って一旦削除した。
単純に考えればニコンひどいじゃないか。販売店えらい!ということになるんだけど、それはちょっと違うような気がする。

物事にはいろんな側面があって、例えば仮に販売店が道理に反したことを行なっていて、サービスセンターが日頃からその尻拭いをさせられていたら、サービスセンターは顧客に対しこの手の問題は基本的に直接販売店と交渉するように誘導するのはあり得る話だ。
あるいはニコン内部で製造管理の部門と販売サービス部門の間に軋轢があって互いの尻拭いをしたがらないという風土があったり。
あるいはただ単にこういった精密機器を扱う職種では、顧客の不注意で発生する機器の不調を初期不良扱いするのは妥当でないという判断が一般的であるとか。

だが最も可能性が高いのはニコンはこういった問題を抱えたまま商品を市場に出さないために最大限の努力を払っていて、例えば特にコンマ何ミリの精度を要求されるマウントを目視でわかるほどの歪みを残したまま発送するなどということは事実上絶対にありえないということを末端のサービスマンに至るまでが知っていてそれを誇りに思っており、それゆえに安易に初期不良と認めることはできないということかもしれない。
今回サービスカウンターで僕の対応をしてくれた女性はかなり優秀な方だった。
それは僕がドット抜けの修正だけを目的に来店したにもかかわらず、彼女が独自の眼で隠れていた問題を拾い上げる能力を持っていたことからも明らかだ。
同じ職業人として言えば風邪でうがい薬だけをもらいにきた患者から隠された内臓の疾患を引き出すことが出来るなら、それはかなり信頼できる医師と言える。
また仮に彼女が機体の歪みの可能性に思いを馳せたとしても、そもそも顧客はドッド抜けの修正だけを望んでいるのだからそのまま黙ってローパスフィルター清掃だけを行っておけば顧客は笑顔で帰っていくわけで、それを黙っていては職業倫理に反すると考えたからこそ彼女は僕にそのことを聞きただしたわけだ。それを意識的に行なっているのではなく、あたりまえのこととして彼女はそうしているのだろう。
そういう優秀な人材をカウンターに配しているということからもその組織の見識が見て取れる。

じゃあそれはそれとして顧客としての僕の行き場のない不安や不満や経済的な負担はどうしてくれるのかということになる。対応が官僚的にすぎないか。
だがそれについては訴える相手が違うということだ。
サービスセンターは正しい診断と的確なメンテナンスという技術面に軸足があり、販売店は顧客を増やすために顧客の満足度に軸足を置く。
今回僕がサービスセンターで正しい診断を得て、販売店で商品を交換してもらったというのが、結果的に最も妥当な経緯だったということなのかもしれないというのが、長い話しの割には実りのない今日の結論ということで。

4 件のコメント:

  1. こんばんは
    大変でしたね!
    災い転じて、と言うふうに
    shinさんが納得できなかった、ピントや質感の問題が改善されれば良いですね
    ディスタゴンの能力?問題も冤罪だった、という事になるとか...
    また、作品アップを楽しみにしています。

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  2. hiroshipsさんありがとうございます。
    機材にこだわらずいい写真を撮らねばと反省しています。

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  3. shinさんごめんなさい。 ちょっと私の意見を。
    重要なのは、お客様であるshinさんに、その不具合の原因となるような思い当たることがまったく無いこと。
    それなのに購入した直後なのに重大な不具合があった事実。

    私が思うに、
    サービスセンターの方がドット抜け以外の不具合を見つけそれを教えてくださった。  
    修理費用は〇〇円です。  
    ここで終わっちゃいけないと思うんです。
    でもお客様はその不具合が発生するような使い方はしていない。  
    くどいようですが、ここが最も重要。

    サービスセンターの方に「販売店に状況説明してみてはいかがですか?」くらいの言葉があっても然るべきではなかったのかなと思うわけです。

    私のコメントでややこしいことにしちゃって申し訳ございませんでした。

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  4. larywaさんありがとうございます。
    大事なことを書き落としていました。
    サービスセンターの方からは販売店に相談されてはどうですかと言われました。
    「なら何の問題もないじゃないか」
    そうなんです。いや面目ありません(笑)。

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