2010/04/04

Pros and Cons

カメラやレンズの評価をアップしている海外のサイトを見ていると"Pros and Cons"という言葉によく出くわします。
これは日本語の「長所と短所」に相当する言葉で、「このレンズのProsは比較的廉価なわりにコントラストに優れていること、Consは階調表現にやや難があること」といった風に使われます。

もちろん長所と短所はカメラやレンズだけではありません。
この世の森羅万象にはあまねく長所と短所が存在します。
車や煙草、酒や薬やナイフなど、影響力の強いものほど、長所と短所がはっきり現れるようです。
逆に水や空気や、樹や米など、我々の日々の生存に深く結びついているものの長所と短所はあいまいで中性的です。
つまり特殊なもの、付加価値的なものには長所と短所が現れやすく、基本的なものは中性的と言えるかもしれません。

長所と短所という概念自体が、我々人間にとって有用かどうかという観点から生まれたものなので、働きが突出しているものほど長所と短所が明瞭になるのは当然かもしれません。
また長所の程度は、我々が好ましいと考える方向にどれだけ貢献しているかによって決まるので、時代や場所によって長所や短所は変化します。
煙草のように、かつて愛好されていたものが蛇蝎のように嫌われたりするわけです。
医学の世界でもかつて大きな社会問題になったサリドマイドが、現代においてはその血管新生阻害作用によって多発性骨髄腫の治療薬として脚光を浴びたりしています。

長所と短所はモノだけではなく、裕福、貧乏、長生き、短命、政治、文学、青春、老齢、聡明、愚鈍といった概念にも存在します。
ある概念がある時代のある場所でその長所だけがもてはやされ、あたかもその概念には短所などなく、「よいこと」そのもののように考えられている場合があります。それはその時代の目指す方向と、その概念の長所がぴったり一致しているからなのでしょう。
我々の時代に、長所だけが存在しているものとしては、例えば「平和」、「愛情」、「自由」などがあります。
それがいつどこでかはわかりませんが、こういった概念がConsと捉えられる時代が来るかもしれません。

えーと、つまり今日言いたかったのは、便利さにもほどがあるということなんです(笑)。
私たちの時代における「便利」という概念は前述の「短所」のない、「長所」だけの概念だったような気がします。
資本主義社会にとっては、僕たちは常に不便であり、常に新たな便利にむかって進んでいくと思ってくれる方が、継続する消費活動のためによいのでしょうけれども、たぶん私たちはようやく便利と不便の間には、今の私たちがほどよいと感じる適度な便利さ(不便さ)というものが存在するのかもしれないと気付き始めているような気がします。
これはたぶんこれから日本が向かっていく縮小経済の流れを反映しているのでしょう。
だから便利さをこれぐらいで「抑えておく」という知恵の使い方がこれから徐々に流行るのかもしれません。

12 件のコメント:

  1. SNOOPY4/05/2010

    お誕生日おめでとうございます。
    shinさんの写真でお花見させていただいてます。
    いつも素敵な写真ありがとうございます。
    これからも撮り続けてください。

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  2. SNOOPYさんありがとうございます。
    53歳なんていう、こっぱずかしい歳になってしまいました。
    僕は16歳の夏に、「今この瞬間に僕が感じているみずみずしい思いは永遠に失われてしまうだろう。
    僕が中年になったら、僕がこんな感情を持っていたことなど、とっくの昔に忘れ去っているだろう」と思っていました。

    でもそれは間違っていた。
    僕はちゃんとそのときのことを覚えている。
    そして今でも切ないセンチメントを感じることが出来る。
    それは生きてみなければわからないことでした。

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  3. とかげ4/05/2010

    shinさん、誕生日だったんですね。
    おめでとうございます。

    今日職場で若い人に「レコードの曲の間の溝に針を落とすことを知らないでしょ」という話をしていました。
    それを「不便」とは感じていなかったし
    それを思い出して「切ないセンチメント」を感じています。
    私は今44歳だけど、16ぐらいのときには切ない事だらけでアウアウしていました(笑)。

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  4. とかげさんありがとうございます。
    今日は「私の年齢は実はカミングアウト」大会になってしまいましたね(笑)。
    レコードの溝に針を落とす時の感覚や、
    DJが大好きな曲の名前を言ったあとテープレコーダーのRECボタンを押すまでの行き詰まる瞬間や、
    曲がフェードアウトしていく時にDJがしゃべり始める直前にSTOPを押すタイミングや、
    ああ、そんな何の役にも立たないノウハウの集積が明らかに僕の青春の一部だったなー、とふと思い出しました。

    宮崎駿監督の「ハウルの動く城」で、主人公の男の子が何の役に立つのかもわからないがらくたの巨大な集積の中に住んでいる様子は、あの頃の僕たちそのものだったなと思ったりします。

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  5. 今日はお誕生日なのですね。
    おめでとうございます。
    私は4月2日なのです。
    同じ牡羊座ということで嬉しいです。(笑)
    今日は写真や文章とは関係のないコメントで失礼しました。

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  6. わお、DIONさん、もう3日経ってしまったけどおめでとうございます。
    実は僕も自分の星座を気に入っています。
    性格もそのまんまだったりします。(^_^)。

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  7. お誕生日、おめでとうございます!
    (1日遅れとなってしまいましたが。。)
    ますます、みずみずしいお写真のアップ、楽しみにしております(^_^)

    長所と短所のお話、僕もshinさんの考え方に大変共感いたしました。
    今の社会や子どもの教育に関しても、少し当てはまるように感じました。
    短所は改めることを強いられ、何か見えない圧力によって、
    常に平均の無個性を求められているような。

    長所も短所も全部ひっくるめて、というかそういうのを超越した
    魅力的な人になれたらと思います。

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  8. soltylifeさんありがとうございます。
    >短所は改めることを強いられ、何か見えない圧力によって、
    常に平均の無個性を求められているような。

    教育の現場に対する社会の無意識の圧力というのは本当に大きいものがあると思います。
    教育施設というのは社会の圧倒的に優位な「思いこみ」に対するアジール(避難所)としての役割を担うべき(内田樹)と思います。
    異質な考え方、異質な人の海を泳ぐための場所。
    それが教育施設なのかも知れませんね。
    「こんなこと勉強して何の役に立つのか」という問いに対し、
    「いいから黙って勉強しろ」と答える場所。

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  9. Bloggerの不調のせいでしょうか。とかげさんとDIONさんのコメントと、お二人に対する僕の返事が見れなくなっています。
    うーん、わけのわからん現象だ。
    自然復旧を待ちたいと思います。

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  10. あ、治ったみたい。

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  11. かつて「君の立場になれば君が正しい、僕の立場になれば僕が正しい」と歌ったのはボブ・ディランですが、長所や短所は立場や見方を変えれば逆転するものだと思っています。
    しかしながら、ユリウス・カエサルが「人は自分の見たいものしか見ない」と言ったように、多くの人は物事を違う視点から見るということは難しいのだろうとも思います。

    写真ではクラシックカメラやトイカメラなどであえて不便を楽しむという世界がありますね。いわゆるスローライフというやつの一種ということになりましょうか。
    一時ロシアンカメラ(旧ソ連製カメラ)にはまったことがありましたが、フィルムの装填にコツがいるとか巻き上げをあせるとフィルムが千切れるとか、なかなか面白い世界でした。こういうのは利便性や汎用性を追い求めるデジタルカメラとは対極の世界ですね。

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  12. geckoさんありがとうございます。
    そうかー、ボブ・ディランがそんなことを言ってましたか。
    「君の立場になれば君が正しい、僕の立場になれば僕が正しい」
    いい台詞ですね。これは覚えておいていい言葉ですね。

    カメラもレンズも、考えてみれば世界を変換する道具だから、いろんな世界を見て考え方を柔軟にする役割があるんだよ、だから僕があれこれいろんなカメラやレンズが欲しくなるのは、正しいことなんだ、と妻に言っても説得力ないかな、ないよな(はぁ~(ため息))。
    失礼しました。(^_^)。

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