2014/04/20
伊丹さんのドライビンググローブ
僕が伊丹さんに心酔していたのは大学生の頃で、もう35年も前になるけれども、今も彼を敬愛する気持ちに変わりはない。
彼の「ヨーロッパ退屈日記」にドライビンググローブの話が出てくる。
いや正確にはドライビンググローブとは言わず、ドライブ用の手袋と彼は表現していたのだが、パリでは必ず某店で「絶妙な」(と彼は表現した)手袋をまとめ買いする習わしだったとある。
パリでドライブ用の手袋を買うなどというのは、当時貧乏学生だった僕にとっては何の縁もない話だが、彼自身の手による魅力的な挿絵にもまして三十余年を経ても何かですぐにこのページを思い出してしまうのは、彼の考え方やモノゴトの面白がり方なども含めて彼のスタイル全てがその当時の僕の人格形成に欠かせないものだったからだろう。
彼は一貫して「正統」であること、フェアであることにこだわった人だった。
やっつけ仕事や小手先のごまかしを嫌い、やむを得ずフェアたりえない場合こそあれ、そのことを恥じない鈍感さを彼は軽蔑した。
車の作法については交通ルールの考え方、スポーツカーの減速やステアリングの持ち方等に加え、ドライブに際しては手袋を着用することが彼の中で正統に位置付けられることのひとつだった。
僕はそこまで正統にこだわりがあるわけではないし、アバルトのアルミ削り出しのシフトノブの手触りはとても気に入っているが夏の熱さや冬の冷たさを考えてドライビンググローブを購入することにした。
写真は伊丹さんのグローブに一番似ていると僕が勝手に思っているCACAZANのDDR-031。
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