織田信長のある一日
天下を取った信長は、自分と生年月日が同じで、生まれた時刻も同じ男がいるなら会ってみたいと思い、部下に命じて該当する人物を探させた。
条件に合う男が一人見つかったので会ってみると案に相違して極貧のみすぼらしい男であった。
信長は男に、「お前とわしはずいぶん違うようだな」と言った。
すると男は、「いえ、上様と私とは一日違うだけです」と答えた。
「一日とはどういう事か」と信長が尋ねると男はこう答えた。
「境遇は過ぎ去った過去の幻ですし、明日のことは誰にもわかりません。つまり上様と私の違いは今日一日だけではありませんか」
信長が彼にたくさんの褒美を持って帰らせたことから、信長はこの男の言葉を単なる負け惜しみとは捉えていなかったことがわかる。
どんな境遇の人にとっても、これまでどんないきさつがあろうとも、「いま」「ここ」でどう生きるかがすべてなのだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿