学生時代は試験勉強のためにたくさん線を引いた。
南極点に旗を立てるアムンゼンのようなものである。
最初の頃は好きな本にもやたらと線を引いていたが、あるとき大事な文章に線を引くと、何かが変わってしまうことに気がついた。
線を引く前に感じた「あのこと」が、線を引いたあとでは感じることができない。消しゴムで消しても、「あれ」はもどってこない。
久しぶりに読み返した本では、その印象はさらに強くなる。以前強い感興を受けた文章も、線が引いてあると駄目なのだ。綺麗な風景なのに、到る処に星条旗が立っている感じだ。
今でも仕事の本には線を引くが、好きで読む本には線を引かない。大事な文章の上に星マークをつけたりもしたが、それもうるさくなって今ではページの耳を小さく折っている。
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