2021/02/10

#110


#110
Nikon D800E Ai AF Nikkor 28mm F2.8D









このニコンの28ミリを買ったのはいつだったか、購入履歴を調べたら2015年。
当時の日記によれば現場を離れて慣れない管理業務に伴う重度のストレスで耳鳴りが始まった年。iPad mini3を買った年。パネライを買った年。ウエリントンメガネを買った年。広島へ赤瀬川原平芸術原論展を観に行った年。百日咳にかかった年。生涯で初めて仕事が楽しくなくなった年、ということでつらい冬空のような一年だった。ひとはストレスに晒されるとやたら買い物をするのだろうか。
フォトヨドバシのこのレンズの紹介記事
”かなりの周辺落ち、こってりした色のりが郷愁を誘うような光景にぴったりな1本。(中略)地上に沈殿する空気を捉え、空の色を余すこと無く塗り込むこのレンズは、なかなかトライしがいのある芸術肌の1本です。非常にコンパクトなこともあって、鞄に1本忍ばせるのも容易く、太い鉛筆で塗り込んだような光景を捉える時、アクリルペイントのように盛りを感じる色合いの光景に出会ったときにマウントすれば、面白い画が撮れるのではないでしょうか”というKさんの名文にころりとまいってしまった。

しかし僕にとってはかなり手強いレンズだった。クセが強いからではない。もともと周辺光量落ちを期待して買ったレンズだし、見るべきスペックがないのは折込済み。まぁどちらかといえば当時憧れだったライカ的なスタンスを期待していたのかもしれない。でもそういった、光と影のグラデーション、色のトーンの変化にマッチした被写体になかなか出会えず、というか僕の眼が育っていなかったせいで御多分に洩れずしっかり持て余してしまった。なんとか使いこなそうといろいろ撮り方を工夫したがうまくいかず、2017年の2月を最後に防湿庫の長い眠りについた。

防湿庫の片隅は意識の片隅でもある。売ってしまおうかとも思うが思いきれないのは出しそびれた宿題のようなものだろうか。
今回積極的に三脚を使い初めて、マクロにも飽きてきたしちょっと見晴らしのいい写真も撮りたいな、そうだdp0 quattroだ、あぁそういえば例のNikonの28mmも絞って撮ればキリッと気持ちのいい写真が撮れるかもしれないと思って久しぶりに連れ出したが結果はやはり完敗。絞っても線が太いので繊細なイメージにならないという点でdp0とは雲泥の差だ。
やっぱりこのレンズはあかんなぁと思いながら撮れた写真を眺めていたら開放で撮った写真が、あれ?ちょっとええんちゃう?
それでPhotoshopで光と影と色のトーンを調整して納屋の所だけ精細度とコントラストを少し持ち上げてみた。
売らんでよかったか。まだわからんけど。









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