2021/02/07

#107


#107
Nikon D800E AF MICRO NIKKOR 2.8/55




去年の12月にようやく小林秀雄の本居宣長を読み終えた。
秋山(大学浪人時代の友人)とは直接約束を取り交わしたわけではない。秋山が、学問というものに対する憧れや尊敬の念をこの本から学んだのだと誰にともなく独白したことが、自らに課した約束として四十年後の僕にそれを果たさせたのだ。
僕にとって読書というのはその人の世界に入ることだ。その人の世界に入ってひたすら歩く。その世界では晴れの時もあれば曇りや雨の時もある。著者の言うことがとてもよく理解できるときは晴れで、よくわからないときは曇り、さっぱりわからないときは雨だとすると、本居宣長はずっと曇りで時々大雨。上下2巻をずっと曇天の中歩き通した。そうして僕は秋山との一方的な約束を果たしたわけだ。

曇り空の下や雨の中を歩くのはそれほど嫌いじゃない。多くの読書好きは歩くという習慣が身についている。でもあまり曇天ばかりが続いてまったく晴れ間が見えないとさすがに途中で投げ出してしまう。本居宣長に関しては約束だったこともあり例外的に読み通すことが出来た。しかしノドに骨が刺さったままだったので続いて橋本治の「小林秀雄の恵み」を読んだら例によって例のごとく彼は結ぼれをきれいにほどいてくれた。この本も曇りはないわけではない。しかし本の序盤の解錠の喜びが最後まで読み通させるモチーフとなる。晴れたり曇ったりだ。しかし晴れている部分はとても快晴で、「なるほど!」と膝を打つ。それは僕にとって読書の喜びそのものだ。




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