はじめに
3週間ほど前にPetaPixelに掲載された Dr. Kah-Wai Lin氏の記事です。
私自身もごくたまに長時間露光撮影することがありますが、使わない知識はすぐに忘れてしまうので毎回試行錯誤で苦労しています。今回の記事の内容も多分しばらくしたら忘れてしまうと思いますが、こうして書き残しておけば困ったときに見返すこともできると思って訳してみました。例によって興の赴くままに訳しているので意訳・誤訳満載かもしれませんがご容赦を。
以下翻訳
10段のNDフィルター(ND1000)を使ったことはおありでしょうか?長時間露光で撮影すると雲の動きを躍動的でダイナミックに捉えることが出来ます。
段数の多いNDフィルターを使うときに試行錯誤でシャッター速度を求めるのが一般的だと思いますが、早朝や夕方などに寒風吹きすさぶなか5分間も露光した挙げ句に露出がオーバーだったりアンダーだったりするのはまっぴらでしょう?さらにあなたがそうした試行錯誤をしている間にも時々刻々と完璧な景色は過ぎ去っていってしまいます。
特に10段のような遮光力の強いフィルターでカメラ側での露光時間設定が不可能な場合、露光時間を計算する方法はいくつかありますが、ここではその5つをご紹介しましょう。
1.単純計算
2.計算表
3.計算アプリ
4.逆算
5.1秒露光法
1~3の方法は理論的には非常に正確なはずですが10段のような遮光力の強いフィルターを用いる場合はそうとも限りません。これは要するに各メーカーとも10段と言っても本当に10段になっているとは限らないからで、製造の困難さからしばしば1段ほどずれていたりするのです。正確を期して計算しても長時間露光においてはこの誤差が思いのほか大きく反映してきます。
4と5の方法はこのような場合に特に有効で、10段のフィルターを買ったばかりのあなたにはうってつけと言って良いでしょう。
長時間露光を行う際に非常に重要なことは、日の出や日の入りなどでは特にそうなのですが短時間にどんどん光が変化していくということです。それは5分以上の長時間露光においては本当に注意すべきことなのです。
日の出の時、光はどんどん強くなるので露光オーバーになるリスクがありますし、日の入りの頃はどんどん暗くなるので露光アンダーになるリスクがあります。これはこのような時間帯に正しい露光を行うために留意しておくべき事柄です。例えば日の出のときには露光時間を想定より短めにするとか、日の入りのときには露光時間を想定より長めにするなどの対応を考慮すべきでしょう。
1.単純計算
単純計算はときにいい仕事をしてくれます!以下がその計算式です。
求める露光時間=ベースになる露光時間×(2のn乗) (nはNDフィルターの段数)
フィルター無しのときのシャッター速度が1/4秒のとき、10段のNDフィルターを付けると
求める露光時間=1/4×(2の10乗)=1/4×1000=250秒
2の10乗は実際には1024ですが誤差は少しなので1000と覚えておくほうが便利です。
6段のフィルターの場合はどうでしょう。フィルター無しのシャッター速度が2秒なら
2×(2の6乗)=2×60=120秒
(この場合も2の6乗=64のかわりに60を用いています)。
6段のNDフィルター:求める露出時間=ベースの露出時間×60
10段のNDフィルター:求める露出時間=ベースの露出時間×1000
露出時間が30秒以上になるような環境ではたいていカメラ側で計算してくれないので自分で計算しなければなりません。そのような暗い環境で暗算するためにはシャッター速度が1/10秒とか1/20秒とかの簡単な数字になるように絞りやISOをイジる必要があります。
2.計算表
表は翻訳元のサイトを参照して下さい。表の使い方も簡単なので訳は省略します。
3.計算アプリ
これも翻訳元のサイトを参照して下さい。Nisi JapanのサイトにはiOSアプリとAndroidアプリへのリンクもあります。
4.逆算
まずシャッター速度30秒、ISO 100、絞りは適当に設定。NDフィルターが付いていれば露出インジケーターはアンダーを指しています。次に露出インジケーターが適正になるまで倍々でISOの段数を上げます(ISO100→200→400→・・・)。このとき何段上げたかをカウントします。
ISOを100に戻します。露光時間をB(バルブ)にします。シャッター速度30秒を段数分倍々に上げていきシャッターを押します。
[具体例]
シャッター速度30秒、ISO1600が適正露出なら、ISO100→200→400→800→1600
なので4段です。従って露光時間は
30秒→1分→2分→4分→8分
となります。ISO 100にして8分露光して下さい。
5.1秒露光法
正しい露光時間があっという間に分かる方法がこれです。この方法は2008年にSam Wang氏が報告しています。
まずMモードにしてISO6400、シャッター速度1秒でテスト撮影します。うまく撮れているかどうかをヒストグラムでチェックします。うまく撮れているなら露出時間をB(バルブ)にし、ISO 100、1分で撮影します(※)。
テスト撮影でアンダーなら露光時間を1秒から2秒に変更します。OKなら本撮影時間は2分です。3秒なら3分、4秒なら4分(以後同様)。1.5秒なら1.5分です。
テスト撮影でオーバーなら?0.5秒→。0.5分です。
要するに秒を分に直すだけです。
この1秒露光法の原理は露出の三角関係が分かれば簡単です。
ISO 6400からISO100までは6400→3200→1600→800→400→200→100の6段なので2の6乗=64。つまりカメラに入ってくる光は1/64になります。
1分は1秒の60倍なので露光時間を60倍、つまり秒を分に変えてやればほぼ同じ露光になるというわけです。
テスト撮影で10秒→本撮影10分という結果が出たけれども、もっと短い露光時間で撮影したいと思うならISOや絞りを変えればよいでしょう。
例えばISO100で10分ならISO200にすれば5分、ISO400にすれば2.5分ですし、F16で10分ならF11にすれば5分、F8なら2.5分という具合です。
一秒露光法は6段NDフィルターで薄暗くて、でも露光時間が30秒以上なのでカメラオートに頼れない場合も有効ですし、あるいはもっと遮光力の強い15段のNDフィルターでも使えます。
また一秒露光法はNDフィルターを用いない夜間撮影にも有効です。残念なことにほとんどの人は試行錯誤で夜間撮影しています。
以上で翻訳は終わりです。
日本ではNDフィルターの濃さをND4、ND8、ND1000というふうに表現することが多いですが、海外の写真関連のサイトでは1-stop、2-stop、10-stopというふうな表現が一般的です。
この日本のNDナンバーと海外のstopとの関係は以下のとおりです。
↑Nisiのサイトより。
ND8のような日本式の記述の8という数字はこのフィルターを使うと入ってくる光の量が1/8になるという意味です。ND8は海外では3-stopのNDフィルターに相当しますが、この3という数字は2の3乗、つまり光の量を半分(1/2)にするという行為を3回繰り返すということで、半分の半分の半分は1/8ですよね。この数字は光の量を何回半分にしたかを表しています。
うーん、まぁ日本式のほうが、光の量が何分の一になったかが直感的にわかる数字ではありますが、欧米式の記述にも利点があって、例えばND4とND8のフィルターを持っていてもっと暗くしたいときはND4とND8を重ねて使ったりしますよね。この時NDはいくらなんでしょう?
欧米式なら2-stopと3-stopを重ねるので2+3=5の5段分とすぐにわかります。
(2回(半分)にしてさらに3回(半分)にするんだから合計5回(半分)にしたわけです)
日本式の記述だったらどうでしょう。
ND4にND8を重ねるということは、1/4をさらに1/8に分けるということだから
4×8=32 つまりND32ということですね。
ま、足すか掛けるかだけの違いか(笑)。
ついでにレンズの絞りはなぜ2.8とか5.6とか11とか変な数字が多いのかについてはこちらのサイトに非常にわかりやすく書かれていますので興味のある方は覗いてみて下さい。
また後日実際の使用経験についても記載してみたのでよければ御覧ください。
(※)このブログをアップしたときには
「まず(フィルター無しで)MモードにしてISO6400、シャッター速度1秒でテスト撮影します。うまく撮れているかどうかをヒストグラムでチェックします。うまく撮れているなら(NDフィルターを装着して)露出時間をB(バルブ)にし、ISO 100、1分で撮影します」と記載してしまいましたが、これは間違いで最初からNDフィルターを装着したまま撮影してください。なぜ間違った記載をしてしまったかというとPetapixelの本文では左の写真はNDフィルターなしのISO6400、右の写真はNDフィルターありのISO100と記載されていたからです。
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