ラベル 音楽 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 音楽 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020/07/25

What Is There To Say?

 

 

そとは雨だしコロナだしと思い、昨日眼鏡のツルを磨きながらBill Evansのアルバム"Everybody Digs Bill Evans"を聴いていたらこの曲が心に刺さった。

What Is There To Say? 直訳すれば「これ以上何を語ることがあるだろう」。
調べてみるとこれはブロードウェイのコメディ「ジーグフェルド・フォリーズ」のために書かれた曲らしくて、作曲はVernon Duke、作詞はE.Y.Harburg。書かれたのは1934年。
歌詞も見つけたので例によって意訳してみた。

What is there to say
もう言葉はいらない

And what is there to do
ただいるだけでいい

The dream I've been seeking
永くさすらい探し続けた

Has practically speaking come true
夢がかなったのだから

 

What is there to say
言葉は意味を失い

And how will I pull through
放浪は終りを告げた

I knew in a moment
虚ろだった私の心を突然溢れさせたもの

Contentment and wholement, just you
それはあなた

 

You are so lovable
愛を奪い

So livable
孤独を奪い

Your beauty is just unforgivable
私を奴隷にする

You're made to marvel at
私にとってあなたは

And words to that effect
言葉の意味そのもの

 

So what is there to say
何を語ろう

And what is there to do
おこないの果てに

My heart's in a deadlock
あなたは私を囚え

I'd even face wedlock with you
私はあなたを囚える

 

You are so lovable
愛を奪い

So livable
孤独を奪い

Your beauty is just unforgivable
私を奴隷にする

You're made to marvel at
私にとってあなたは

And words to that effect
言葉の意味そのもの

So what is there to say
何を語ろう

And what is there to do
おこないの果てに

My heart's in a deadlock
あなたは私を囚え

I'd even face wedlock with you
私はあなたを囚える

 

 

 

2019/08/15

She Came in Through the Bathroom Window





She came in through the bathroom window
風呂の窓から入ってきたのは
Protected by a silver spoon
ええとこのお嬢
But now she sucks her thumb and wanders
今じゃ文無し放浪娘
By the banks of her own lagoon
銀行にも見放されてる
Didn't anybody tell her?
教えてあげるやつはいなかったの?
Didn't anybody see?
誰も気に留めなかったの?
Sunday's on the phone to Monday
日曜が月曜に告げ口し
Tuesday's on the phone to me
火曜が僕に知らせてきたことを
She said she'd always been a dancer
「私ずっとダンサーだったの」
She worked at fifteen clubs a day
「日に15軒もクラブを掛け持ちよ」
And though she thought I knew the answer
「あなたなら答えを知ってると思うんだ」
Well, I knew what I could not say
ああ知ってるよ、秘密だけどね
And so I quit the police department
それで僕は警察署をやめて
And got myself a steady job
もっとヤクザな仕事についた
And though she tried her best to help me
彼女は精一杯僕の役に立とうとしたけど
She could steal but she could not rob
ちょろまかしはできても強奪は無理だった
Didn't anybody tell her?
教えてあげるやつはいなかったの?
Didn'tanybody see?
誰も気に留めなかったの?
Sunday's on the phone to Monday,
日曜が月曜に告げ口し
Tuesday's on the phone to me
火曜が僕に教えてくれたことを 
 
 "She Came In Through the Bathroom Window"
the Beatles from their 1969 album Abbey Road.
Written by Paul McCartney and credited to Lennon–McCartney.
 
 
The Beatles 最後のアルバム "Abbey Road"。
B面の名曲に次ぐ名曲のラッシュ。
この偉大なバンドが崩壊しながらけたたましい火花を放って奈落へ落ちていく姿は何度聞いても慄然とする。
そのB面の中ほどで現れるのがこの曲だ。
娘がバスルームの窓から入ってくるという、ファンタジックでサイケデリックでエロチックでコケティッシュなイメージ(どんなイメージやねん)。
でもちゃんと歌詞の意味を考えたことがなかったので訳してみることにした。
えっとですね、この世には三度の飯よりビートルズみたいなひとがいるので、ビートルズの訳詞をするというのはとてもリスクを伴う行為なんです。
ぜんぜんちゃうやん、アホちゃうか、ええかげんなことを書くな、何も知らんくせにというお叱りはごもっともです。
もう最初から謝っておきます。この訳詞は間違っています。あなたが正しいです。だからほっといてくださいね。
 
と防御線を張っておいて自論を述べます。
みなさんご存知のようにこれはビートルズのファンの女性がポールの家に忍び込んだ事件をヒントに書かれた曲です。
Wikipediaにはこう書かれています。

McCartney said the song was inspired by Apple scruffs (dedicated fans who hung around outside the Abbey Road studio, the Apple Corps offices, and the individual homes of the Beatles), who broke into McCartney's St John's Wood home. Diane Ashley says: "We were bored, he was out and so we decided to pay him a visit. We found a ladder in his garden and stuck it up at the bathroom window which he'd left slightly open. I was the one who climbed up and got in." She then opened the front door to let the others in. The scruffs also stole a number of photographs in addition to clothes. Another Apple scruff, Margo Bird, remembers being good friends with McCartney – she would often take his dog for walks – and later got a job at Apple Corps. She says that she was asked to retrieve a photograph of his father Jim, which she did.

(拙訳)ポールによればこの曲は当時ポールが住んでいたSt John's Wood homeに忍び込んだアップルのグルーピーにヒントを得て書かれたそうだ。(屋敷に忍び込んだ一人である)Diane Ashleyは「私達は退屈していた。ポールはそのとき外出してたので私達はちょっと彼の家にお邪魔しようと思ったの。私達は庭にはしごを見つけた。ポールはいつもバスルームの窓を少しだけ開けてたから、はしごをバスルームの窓にたてかけて私は侵入した」
彼女はそれから正面玄関の鍵を開けて他のメンバーを招き入れた。彼女らは写真を数枚と衣類を盗んだという。
別のグルーピーだったMargo Bird(ポールの友達であり、しばしばポールのかわりに犬の散歩をし、のちにアップルに就職した女性)は当時を思い出してこう述べている。「ポールから彼のお父さんの写真を取り戻してほしいと頼まれたわ。それ盗んだの私なんだけどね」
 
 で、歌詞に移ります。
She came in through the bathroom window
(これはそのままですね)
Protected by a silver spoon
「ええとこのお嬢」
(英語には銀のスプーンをくわえて生まれてくるという言い方があって、それは裕福な家の生まれであることを意味しています)
But now she sucks her thumb and wanders
「今じゃ文無し放浪娘」
(しかし今彼女がチューチューしているのは銀のスプーンではなく親指ですから貧乏だと)
By the banks of her own lagoon
「銀行にも見放されてる」
(ええとこのお嬢だったときは銀行(bank)もいい顔をしていたけれど、今彼女は沼のほとり(bank)に住んでいる、というので銀行にも見放されていると訳しました)
Didn't anybody tell her?
教えてあげるやつはいなかったの?
Didn't anybody see?
誰も気に留めなかったの?
Sunday's on the phone to Monday
「日曜が月曜に告げ口し」
("A is on the phone to B"はAがBに電話で話しているということでしょう?)
Tuesday's on the phone to me
火曜が僕に知らせてきたことを
She said she'd always been a dancer
「私ずっとダンサーだったの」
She worked at fifteen clubs a day
「日に15軒もクラブを掛け持ちよ」
And though she thought I knew the answer
「あなたなら答えを知ってると思うんだ」
(この「答え」というのはたぶん「私は落ちぶれて貧乏になっちゃったけどあなたならお金儲けの方法を知ってるんでしょう?」ということか)
Well, I knew what I could not say
ああ知ってるよ、秘密だけどね
And so I quit the police department
それで僕は警察署をやめて
And got myself a steady job
「もっとヤクザな仕事についた」
(steady jobというのはカタギな仕事という意味ですよね。でもそもそも警察官をカタギじゃないというのは反語です。だからここの本意はたぶんヤクザな仕事のことでしょう。そしてそれは自分のやっている音楽活動のことを揶揄しているんだと思います)
And though she tried her best to help me
「彼女は精一杯僕の役に立とうとしたけど」
(音楽活動はボロ儲けのヤクザな稼業だが、ポールの家に忍び込んで盗みをするのも同じような「盗み」行為じゃないかと)
She could steal but she could not rob
「ちょろまかしはできても強奪は無理だった」
(音楽活動のボロ儲けとチャチな盗みじゃ規模が違う)
Didn't anybody tell her?
教えてあげるやつはいなかったの?
Didn'tanybody see?
誰も気に留めなかったの?
Sunday's on the phone to Monday,
日曜が月曜に告げ口し
Tuesday's on the phone to me
火曜が僕に教えてくれたことを
 
 というわけでこの曲は女の子が僕の家に侵入してチャチな盗みをしたけれど、僕たちはもっとアコギな稼ぎをしてるしな、というポールの自虐的なユーモアを歌ったものかもしれないし、いやそうじゃない!彼女はチャチな盗みをしたけれど、僕たちはファンの心を盗むというもっと大胆な盗みをしてきたんだという意味かもしれませんね。
「そんなしょーもない訳聞きとうないわい!というお叱りの言葉もなくご静聴誠にありがとうございました」(®人生幸朗師匠)
 
 
 
 
 
 

2019/01/12

イパネマの娘

Olha que coisa mais linda
     Look at (that) more beautiful thing
     あのとびきりきれいな姿をご覧
Mais cheia de graça
     more filled with grace
     神の恩寵に溢れたあの姿を
É ela menina
     She is a girl
     その娘はやってきて
Que vem e que passa
     who comes and pass over
    (僕を見ずに)通り過ぎる
Num doce balanço, a caminho do mar
     in a sweet swing, (on) the path to the sea.
     海へと続く道を スウィートにスイングしながら

Moça do corpo dourado
     Young lady of shining body
     まばゆい肢体を持つあの娘
Do sol de Ipanema
     of the sun of Ipanema
     あの娘はイパネマの太陽
O seu balançado é mais que um poema
     Her swing is more than a poem
     その揺れて歩く姿は詩以上だ
É a coisa mais linda que eu já vi passar
     (And is) the beautiful thing I've never seen before.
     僕がこれまでに見たどの情景よりも美しい

Ah, por que estou tão sozinho
     Ah, why am I so lonely
     ああ でもなぜ僕はこんなに寂しいんだろう
Ah, por que tudo é tão triste
     Ah, why is everything so sad
     ああ なぜすべてがこんなに悲しげなんだろう
Ah, a beleza que existe
     Ah, the existing beauty
     ああ 息づく美としての彼女
A beleza que não é só minha
     The beauty which is not only mine
     僕のものではなく
Que também passa sozinha
     which too, pass-by lonly
     誰のものでもなく一人で去っていく彼女

Ah, se ela soubesse
     Ah, if she could have known
     ああ もし彼女が知っていたら
Que quando ela passa
     when she pass-by
     彼女が通り過ぎるときに(私の目には)
O mundo sorrindo se enche de graça
     the world is smiling and filled with grace
     世界が恩寵に満たされて
E fica mais lindo
     and is more beautiful
     より一層美しくみえる
Por causa do amor
     because of love.
     (それは彼女に対する)愛のせいだということを

ポルトガル語題: Garota de Ipanema、英語題: The Girl from Ipanema
作詞:Marcus Vinícius da Cruz e Mello Moraes
作曲:Antônio Carlos Brasileiro de Almeida Jobim

1962年のジョビンの名曲イパネマの娘を原詞のポルトガル語から英語と日本語に訳してみました。
彼女はとても美しく魅力的だけれど、彼女を見ていると寂しく悲しくなるのは彼女がまだ僕や誰かと愛を交わしていないから。そして傍らを彼女が通り過ぎるとき(僕の彼女に対する愛情によって)世界が輝いて見えるということを彼女に知っていてほしかった。
という趣旨の曲です。まだポルトガル語を独習して1年なので訳し方におかしなところがあるかもしれません。また英語訳は逐語っぽくしましたが日本語訳は意訳であることをご了承下さい。

この曲はゲッツ/ジルベルト盤(YouTubeへ飛びます)で大ヒットし世界的なボサノバブームを巻き起こしました。
ジョアン・ジルベルトの妻のアストラッドが歌う"Tall and tanned and young and lovely"はモラリスの歌詞をノーマン・ギンベルが英語に置き換えたもので、イパネマの海岸を若い女性が軽やかに歩く様子が歌詞の音感から伝わってきますし、アストラッドのつたない英語の発音が渚を歩く少女のうぶな感じを引き立てているように思います。

しかしWikipediaのイパネマの娘の項目では「英語詞も、モライスの原詞を意味の上では追っているものの、格調はやや劣るきらいがある」とされており、またこちらの英語のサイトでは"The Girl From Ipanema" Lyrics May Not Mean What You Think(イパネマの娘の歌詞はあなたが思っていたようなものではないかもしれない)としてギンベル自身の以下の発言を取り上げていました。
"It's the oldest story in the world... The beautiful girl goes by, and men pop out of manholes and fall out of trees and are whistling and going nuts, and she just keeps going by. That's universal."
拙訳:世界中おなじみのシーン。美しい少女が通り過ぎると男たちはマンホールから飛び出したり木から落ちたり指笛を吹いたり興奮したりする。でも彼女は知らん顔して通り過ぎる。それは万国普遍のイメージ。

万国普遍かどうかはわかりませんが確かにハリウッド映画では定番のシーンですね。
ただやはり原題の詞の世界とはちょっと違う気がします。大筋はそのとおりなのですが原詞は作者の内面の驚き、切なさ、憧れをひそやかに歌っている印象です。


DSCF4005




追記:
ギター練習ももうすぐ1年。練習曲をスキップして今はこのイパネマの娘にチャレンジしていますが弾き語りまではあと半年ぐらいかかりそうです。
そうだ、歌いやすいようにカタカナも付けておこう。

Olha que coisa mais linda
オーリャキコイザマイスリンダ
Mais cheia de graça
マイスシェージグラッサ
É ela menina
エーラミニーナ
Que vem e que passa
キヴェンキパッサ
Num doce balanço, a caminho do mar
ヌンドッセバランソ カミニョドマー

Moça do corpo dourado
モッサドコフポドラド
Do sol de Ipanema
ドゥソジパネマ
O seu balançado é mais que um poema
ウセウバラサードエマイスキュンポエマ
É a coisa mais linda que eu já vi passar
エアコイザマイスリンダキゥジャビパサー

Ah, por que estou tão sozinho
アーポキストタンソジニョ
Ah, por que tudo é tão triste
アーポキトゥドタントゥリスティ
Ah, a beleza que existe
アーアベレザキジスチ
A beleza que não é só minha
アベレザキノエソミニャ
Que também passa sozinha
キ、タンベィンパッサソジーニャ

Ah, se ela soubesse
ア、スィエーラソベッセ
Que quando ela passa
キクァンドラパッサ
O mundo sorrindo se enche de graça
ウムンドソヒンドシエンシジグラッサ
E fica mais lindo
エフィカマイスリンド
Por causa do amor
ポカウザダモー












2016/07/17

I'm gonna laugh you right out of my life.

ハードな日々が続く。
同僚の看護師からY先生が元気が無い、辞めるかも、友人からお誘いを受けているらしいと聞いて、そうなっても暖かく見送ろうとかねがね思っていたのにひどく落ち込んでいる自分に意外な気がした。
どうして僕には人望がないんだろう、人が集まらずに去っていくばかりだと思えばやるせなく、むしろ自分が去ってしまえばいいのだろうかなどと何の解決にもならない思いつきも浮かぶ。
でも昨日ふと気が付いた。僕は一人でいるのが好きで、もともとそのほうが楽に過ごせるタイプだ。だから自分でも知らないうちにひとを排斥してしまう。その結果ひとは居心地が悪くなり去っていくのだろう。自分で他人を排斥しておきながらその結果に呆然とするのは、考えて見ればおかしい。

僕は晩年の母から「あなたはあまり感情を表に出さなかったけれども印象に残ったことがある」と告げられたことがある。それは僕自身忘れていたことだが小学校4年の時、僕が一番好きだった、そして毎日のように家に遊びに行っていたT君に何かの拍子に「だって僕達親友じゃないか」と言う僕の言葉に「え?そんなふうに思ってくれていたの?ありがとう」と茶化されて、ほかの二人の手前、猛烈に恥ずかしく、僕は自転車を漕いで家に帰ってくるなり母親に、「人間は所詮ひとりなんだ」と叫んだらしい。もともと僕はむしゃぶりつきたいほどひとに甘えたいくせに裏切られて拗ねてしまう。それはそんな小学校の時の体験と関係があるのかもしれない。


最近Keith Jarrett & Charlie Hadenの"I'm gonna laugh you right out of my life"が耳についてはなれない。Jazzのスタンダードナンバーで、ナット・キング・コールなんかが吹き込んでいる。キースの演奏に歌はないけど歌詞を探して訳してみた。今の心境に関係があるようなないような。



I'm gonna laugh you right out of my life,
Laugh, and forget this affair
Guess I was foolish
To care.

最初からきみなんていなかったと
笑って忘れてしまおう
気にしていた僕がばかだったんだ、たぶん

So I'm gonna dance you right out of my dreams,
Try to be carefree and gay
I guess I'll learn to play
The part.

そのかわり僕は夢のなかで君と踊ろう
できるだけ気楽にそしてほがらかに
ちゃんと演じきれるように努力するよ、たぶん

'cause when our friends begin that
Heartless rumor,
I know I'll really need my
Sense of humor.

だってともだちがあの心ないうわさ話を始めたら
ユーモアのセンスで乗り切るしかないだろ

I'm gonna laugh you right out of my life,
Make it a beautiful joke.
No one will know you broke
My heart.

きみのことは笑って忘れてしまおう
ちょっと笑えるいい思い出にしてしまおう
きみが僕の心をこなごなにしてしまったことは誰も知らない

But if I find you and I
Really meant that last goodbye,
Then I'm gonna laugh so hard,
I'll cry.

でもきみに会うのはほんとはあれが最後だったと
言わなくちゃならないとしたら僕はおもいっきり笑って
そして泣くだろう

But if I find you and I
Really meant that last goodbye,
Then I'm gonna laugh so hard
I'll cry.

でもきみに会うのはほんとはあれが最後だったと
言わなくちゃならないとしたら僕はおもいっきり笑って
そして泣くだろう










2014/08/13

音楽の死

P8130001

ご多分に漏れず我が家でもテレビのチャンネル権は妻や娘にあるのでやむなく歌番組を見る羽目になるのだが
死んでしまった音楽の姿を見るのは痛ましい。
今音楽という死体を操っているのはビジネスだが、どんなに華やかにショーアップしても
「この俺という死体に何をやらせようというのか」という音楽自体の戸惑いが余計にライトアップされて
見ているこちらのほうが居たたまれなくなる。

かつて音楽は切れば血が出るものだったが今は中はガランドウで
それは人間も同じで切っても血が出ない人間が増えてしまったので
本当に血が出るのかどうか試そうなどと考えるような人間も現れる。

最近までテレビ番組のトレンドだった「70年代のヒットパレード」も
お通夜の席で故人の良き懐かしき思い出を遺族が語り合うのと同じで
あれは音楽のお通夜なのだろう。

それでもひとにはやはり「音楽」は必要で、音楽には蘇ってくれることを望みたい。
そのためには音楽は一度きちんと死ぬ必要があって、
テレビで一度「音楽のお葬式」をしたらいいと思う。

そしてお葬式がすんだら、大袈裟でない小さな上質の音楽を少しずつ
丁寧に、大切にプレゼンテーションしていく。
そこから新しい芽が出てくるような気がする。











2014/05/14

アメリカを探しに



“Let us be lovers, we’ll marry our fortunes together
I’ve got some real estate here in my bag”
So we bought a pack of cigarettes and Mrs. Wagner’s pies
And walked off to look for America

「いっしょになろうよ、二人のお金を合わせて
ちょっとした土地なら僕は持っているんだ、このカバンの中に」
それで僕らは煙草を一箱とワグナーおばさんのパイを二つ買って
一緒にアメリカを探す旅に出た

“Kathy,” I said, as we boarded a Greyhound in Pittsburgh
“Michigan seems like a dream to me now
It took me four days to hitch-hike from Saginaw
I’ve come to look for America”

ピッツバーグでグレイハウンドバスに乗りながら僕は言った「キャシィ」
「ミシガンがもうまるで夢みたいに遠く感じる
サギノーからヒッチハイクで4日かかった
僕はアメリカを探すためにここまで来たんだ」

Laughing on the bus
Playing games with the faces
She said the man in the gabardine suit was a spy
I said, “Be careful, his bow tie is really a camera”

僕らは他の乗客の顔からいろいろ想像して笑い転げた
あのギャバのスーツを着た男は実はスパイよと彼女が言う
「シッ!彼の蝶ネクタイがカメラだって知らなかったの?」と僕

“Toss me a cigarette, I think there’s one in my raincoat”
“We smoked the last one an hour ago”
So I looked at the scenery, she read her magazine
And the moon rose over an open field

「僕のレインコートに煙草が一本残ってるはずだよ。こっちへ放って」
「ほんの一時間前に最後の一本をいっしょに吸ったじゃない」
仕方がないので僕は窓の外の風景をぼんやり眺め 彼女は雑誌を読んでいる
やがて開けた土地に月が登り始めた

“Kathy, I’m lost,” I said, thought I knew she was sleeping.
“I’m empty and aching and I don’t know why”
Counting the cars on the New Jersey Turnpike
They’ve all come to look for America
All come to look for America
All come to look for America

彼女が眠っているのを知ってるはずなのに僕は彼女に話しかける
「キャシィ 僕は迷子になってしまった」
「からっぽで苦しいのにそれがどうしてだかわからないんだ」
ニュージャージーの高速道路を走る車を数えながら僕は思う
きっとみんなアメリカを探しにやってきたんだ
みんなアメリカを探しにやってきたんだ

© 1968 Words and Music by Paul Simon

今朝起き抜けにベッドでポール・サイモンのアメリカが聞きたくなったのは
最近あの事件があったからかもしれない。


2014/05/03

レコード

HAYDN

もうレコードを聴くこともないだろうと思っていた。
でもせっかく真空管アンプを買ったことだし、むかし買ったレコードはどんな音で鳴るんだろうという興味もあったので
繋いでみたんですが音が小さくて殆ど聴こえない。レコードの音を聴くには別に増幅回路が必要らしい。
TRV-4SEというプリアンプを買って、いま使っているTRV-35SEをメインアンプにすれば35SEの音も更に良くなるしレコードも聴けるようになるらしいんですが
僕はとりあえず今の35SEの音でそこそこ満足しているし、レコード熱がぶりかえすかどうかも(自分のことながら)予測不能。
何より大きな問題は35SEと同じ大きさの4SEを置く場所がない。







audio-technica AT-PEQ20

写真はaudio-technicaのAT-PEQ20という1万円台のフォノイコライザーです。
僕が持っているレコードを数えてみたらクラシック系が60枚、ジャズやその他が20枚位。
ちょっとレコードを聴いてみるだけの僕にとっては手頃かもしれないと思って購入しました。
写真では大きく見えますが実物は手のひらに乗るくらいの小ささです。









R0012914

30年以上前に3万円台で買ったDENON DP-10Fというプレーヤーに繋いでみるとなかなかいい音で歌い始めました。
オーディオマニアのひとからみれば鼻も引っ掛けない組合せでしょうが
この程度のセットで幸せになれるなら我ながらコストパフォーマンスのいい耳だと思います(笑)。












R0012916

しばらくレコードを楽しみたいと思います。
何より驚いたのがずっと流していても聞き疲れないこと。
これはなかなかいいぞ^^。













2014/03/24

to be happy

Triode TRV-35SE

僕が中学生の時は高校受験のため深夜までラジオを聴きながら勉強した。
当時はテレビは言うに及ばずラジオも真空管で
父親が職場の同僚からもらってきた古いラジオは
うしろのパネルがなかったので中が丸見えだった。
薄汚れたラジオは電源を入れてしばらくすると
真空管が熱くなって電気の焼ける臭いがした。








Triode TRV-35SE

20年前から使っているオンキョーのA922というアンプの調子が悪い。
そろそろ新しいのが欲しくなってこの三連休はどこにも行かずにネットでいろいろ調べていた。
今使っているアンプは普通に音が出ていたし何も困ってはいなかったけれど
以前はあれだけ好きだった音楽が永く聴けなくなってしまったのは
歳をとったせいかもしれないがそれだけではないような気もする。

真空管アンプというものがあることは知っている。暖かい音がするらしい。
僕は元来買い物が下手で、着るものを買いに行くとすぐに根(コン)がなくなって
もうなんでもいいやと適当なものを買ってあとで後悔する。
店員さんの口車に乗せられやすいのは彼らの口上がむしろ救いの船だからで
それは僕がその場から早く逃れたいからだ。
視聴に行ったらまたいつものように舞い上がって
冷静な判断もできないまま真空管アンプを買ってあとで後悔するにきまっている。

そうしたらたまたまネットで
アナログとデジタルと真空管のアンプを聴き比べているのをみつけた。
聴き比べるったって、最後はどれもPC経由で聴くんだから
どれほどの意味があるんだろうかと思いながら目をつむって音だけを頼りに聴いてみたら
ボーカル編、ヴィブラフォン編、サックス編、ピアノ編、ストリングス編、オーケストラ編のすべてで
どれがアナログでどれがデジタルでどれが真空管かが全部正解してしまった。
多分それはまぐれだけど、ただ6つのジャンルのほとんどで
自分の好きな音は真空管だったということは、疑いようもなくはっきりした。
それで決心がついた。



Triode TRV-35SE

三連休の殆ど、夜も午前3時までネットであれこれ調べて
価格や音の特徴や拡張性や評判や見た目などで選んだのが
トライオード社のTRV-35SE。それといっしょにDENONのSACDプレーヤーのDCD-1500RESPも購入。

これがベストではないかもしれないけれど僕自身はうん、とても気に入りました。
このアンプは真空管としての特徴が薄くてトランジスタアンプに近いらしいけど
高音・中音・低音のバランスが良くて、期待したとおり聴き疲れないwarm heartedな音がします。

熱くなった真空管に顔を近づけると中学生の時に嗅いだ、あの電気の焼ける匂いがする。
音楽に込められたたくさんの音に、以前は気が付かなかった。
それはCDプレーヤーが新しくなったことも関係しているかもしれないけれど
なんだか僕はちょっと、幸せな気分になってしまった。






2014/02/02

Beyerdynamic DT860

Beyerdynamic DT860

昔の同僚との飲み会のついでにヨドバシ梅田へ行ってヘッドホンを試聴。
ゼンハイザーHD598,HD650、AKG K550, K701、DENON AH-D600EM、オーディオテクニカATH-W1000X、
Beyerdynamic T90, DT990,Custum One Pro, DT860と10種類ほど聴いた中で選んだのはAKG K550とBeyerdynamic DT860。
どちらも好きな音で優劣つけ難くK550の快適な装着感が気に入ったけど在庫切れ。
それで一番最初に「なんじゃこりゃ!」と驚いた音の粒立ちとヌケの良さでDT860を購入。
ネットではあまり評判が良くないみたいだけど老化した僕の耳にはこういうメリハリのある音が合っている。 

2013/09/22

merrill on merrill

merrill with merrill
Sigma DP3 Merrill

秋になった。
久しぶりにジャズ・ヴォーカルを聞きたくなってヘレン・メリルを引っ張りだしました。












merrill with merrill
Sigma DP3 Merrill

ホーンのような歌声がすばらしい。実際彼女はホーン奏者から歌唱法を学んだらしい。
平原綾香もホーン的だけどメリルのほうがsexyです。去年ジャズのアルバムを出した八代亜紀も声質が似ていますね。












merrill with merrill
Sigma DP3 Merrill

2013/03/15

宝物を手に入れたら黙っておけ。

Navarra

それでも親しい友人には是非伝えておきたいこともあるわけで
以前hiroshipsさんが紹介してくれたミッシャ・マイスキーのYouTubeを見たあと
僕が持っているYo-Yo Maのバッハの無伴奏チェロ組曲のカスタマー・レビューをアマゾンで読んでいたら
ある人がアンドレ・ナヴァラを強く推していた。
知らない名前。
その、知らない彼の演奏をYouTubeで聴いてHMVで注文したのが去年の秋。

それから半年のあいだ何度彼の演奏を聴いただろう。
薄暗い石壁の部屋のなか大きなチェロを揺らしながらバッハを弾いている彼が居る。
僕の目の前で父性が踊り、父性が笑い、父性が泣く。
横溢する父性、ほとばしる父性が、ある時は深く物思いに沈み、ある時はおどけてユーモラスにステップを踏む。
そのどの一音も、あたたかくてゴツい。
Yo-Yo Maではいくら聴いても輪郭の浮かび上がってこなかったバッハが
男性的な演奏家が男性的な楽器を使って演奏するとこうなるのだというふうに
ナヴァラの場合彼のチェロはあたかも太いノミでザクザク掘り上げていく様に明快だ。
僕は本当に大好きになった。

2011/07/27

Still Crazy After All These Years



I met my old lover
On a street last night
She seemed so glad to see me
I just smiled
And we talked about some old times
And we drank ourselves some beers
Still crazy afler all these years
Oh, still crazy after all these years

夕べ道で
昔別れた彼女に会った
彼女は僕と会えてうれしそうだった
僕は寂しげに笑った
僕らは少し昔の話をして
再会に乾杯した
いつまでたっても僕はばか
こんな歳になってもあいかわらずばか

I'm not the kind of man
Who tends to socialize
I seem to lean on
Old familiar ways
And I ain't no fool for love songs
That whisper in my ears
Still crazy afler all these years
Oh, still crazy after all these years

わかるだろ
僕は社会に溶け込めるタイプじゃないんだ
生き方を変えられるほど器用じゃない
世間受けするような甘ったるいラブソングなんか作れない
いつまでたっても僕はばか
こんな歳になってもあいかわらずばか

Four in the morning
Crapped out, yawning
Longing my life away
I'll never worry
Why should I?
It's all gonna fade

朝の4時
僕はあくびをして
このどうしようもない人生がさっさと終わってくれることを願いつつ
ベッドに倒れ込む
どうして不安に思うだろう
どうせいつかは消えてしまうのだ

Now I sit by my window
And I watch the cars
I fear I'll do some damage
One fine day
But I would not be convicted
By a jury of my peers
Still crazy after all these years
Oh, still crazy
Still crazy
Still crazy after all these years

今僕は窓際に座って外を見ている
車が走っているのが見える
僕は恐れている
ある穏やかな日に僕が
何かとんでもないことをやらかしてしまうのではないかと
でもきっと僕は僕の素敵な陪審員たちのおかげで無罪になるだろう
いつまでたっても僕はばか
ほんとにばか
ばかだよ
こんな歳になってもあいかわらずばかだ


"Still Crazy After All These Years" Paul Simon 1975

2010/11/12

Another Day



Every Day She Takes A Morning Bath To Wet Her Hair,
Wraps A Towel 'round Her
As She's Heading For The Bedroom Chair,
It's Just Another Day.
Slipping Into Stockings,
Stepping Into Shoes,
Dipping In The Pocket Of Her Raincoat.
It's Just Another Day.

At The Office Where The Papers Grow She Takes A Break,
Drinks Another Coffee
And She Finds It Hard To Stay Awake,

It's Just Another Day. Du Du Du Du Du
It's Just Another Day. Du Du Du Du Du
It's Just Another Day.

So Sad, So Sad,
Sometimes She Feels So Sad.
Alone In Her Apartment She'd Dwell,
Till The Man Of Her Dreams Comes To Break The Spell.

Ah, Stay, Don't Stand Her Up
And He Comes And He Stays
But He Leaves The Next Day,
So Sad.
Sometimes She Feels So Sad.

As She Posts Another Letter To The Sound Of Five,
People Gather 'Round Her
And She Finds It Hard To Stay Alive,

It's Just Another Day. Du Du Du Du Du
It's Just Another Day. Du Du Du Du Du
It's Just Another Day.

So Sad, So Sad,
Sometimes She Feels So Sad.
Alone In Her Apartment She'd Dwell,
Till The Man Of Her Dreams Comes To Break The Spell.

Ah, Stay, Don't Stand Her Up
And He Comes And He Stays
But He Leaves The Next Day,
So Sad.
Sometimes She Feels So Sad.

Every Day She Takes A Morning Bath To Wet Her Hair,
Wraps A Towel 'round Her
As She's Heading For The Bedroom Chair,
It's Just Another Day.
Slipping Into Stockings,
Stepping Into Shoes,
Dipping In The Pocket Of Her Raincoat.

Ah, It's Just Another Day. Du Du Du Du Du
It's Just Another Day. Du Du Du Du Du
It's Just Another Day.


毎朝入浴して髪を潤しタオルで乾かす
バスルームの椅子の方に歩きながら彼女は思う
今日もいつもと同じありふれた一日。
ストッキングをはいて靴を履く。
レインコートのポケットに手をつっこむ。
それはただのありふれた一日。

書類が山積みのオフィスで彼女は一息入れる。
もう一杯コーヒーを飲む。
そこで彼女は耐えられないほどの眠気に襲われる。

それはいつものありふれた一日
何の取り柄もない一日
ありふれた一日

すごく悲しくなる
アパートに一人でいると
彼女は時にどうしようもなく悲しくなる
呪縛を解いてくれるのは夢に現れる男だけ

どうかもう少しここにいて置き去りにしないでと彼女は願う
男は夜に現れて共に夜を過ごし朝には去っていく
すごく悲しくなる
彼女は時にどうしようもなく悲しくなる

手紙をもう一通投函したら5時のチャイム
みんなが集まって彼女を取り囲む
そして彼女は思う。こんな日々にはもう耐えられない。

それはいつものありふれた一日
何の取り柄もない一日
ありふれた一日

すごく悲しくなる
アパートに一人でいると
彼女は時にどうしようもなく悲しくなる
呪縛を解いてくれるのは夢の男だけ

どうかもう少しここにいて置き去りにしないでと彼女は願う
男は夜に現れて共に夜を過ごしそれでも朝には去っていく
すごく悲しくなる
彼女は時にどうしようもなく悲しくなる

毎朝入浴して髪を潤しタオルで乾かす
バスルームの椅子の方に歩きながら彼女は思う
今日もいつもと同じありふれた一日。
ストッキングをはいて靴を履く。
レインコートのポケットに手をつっこむ。
それはただのありふれた一日。

それはいつものありふれた一日
何の取り柄もない一日
ありふれた一日

Recorded by Paul McCartney in New York in 1970, during the sessions for his album Ram.

2010/11/11

I will




Who knows how long I've loved you
You know I love you still
Will I wait a lonely lifetime
If you want me to, I will

For if I ever saw you
I didn't catch your name
But it never really mattered
I will always feel the same

Love you forever and forever
Love you with all my heart
Love you whenever we're together
Love you when we're apart

And when at last I find you
Your song will fill the air
Sing it loud so I can hear you
Make it easy to be near you
For the things you do endear you to me
Ah, you know I will
I will

誰も知らない
ぼくがきみのことをずっと好きだってこと
今でもずっとそうだよ
これからもぼくはずっとひとりかも
きみがそう望むならね

だってもしぼくがきみに出会ったとしても
きみの名前さえ知らないんだよ
でもそれはたいしたことじゃない
ぼくのきもちはずっと同じ

ずっとずっときみがすき
こころから
いっしょにいても
はなれていても

それでいつかぼくがきみを見つけたら
きみの歌でぼくは満たされる
ぼくに聞こえるように大きな声で歌って
きみをもっと近くに感じたい
きみのすることはみんなぼくを夢中にさせるから
きっとずっと
この感じ方は変わらない


"I Will" Song by The Beatles from the album The Beatles 1968

2010/11/10

Junk



Motor Cars, Handle Bars
Bicycles for Two
Broken Hearted Jubilee
Parachutes, Army Boots
Sleeping Bags for Two
Sentimental Jamboree

Buy Buy
Says the Sign in the Shop Window
Why Why
Says the Junk in the Yard

Candlesticks, Building Bricks
Something Old and New
Memories for You and Me

Buy Buy
Says the Sign in the Shop Window
Why Why
Says the Junk in the Yard


自動車 ハンドル
僕たちの自転車
悲しい祝日
パラシュート 軍隊の靴
僕たち二人の寝袋
感傷的なお祭り

買ってよ 買ってと
売店の張り紙が言う
なんでよ なんでと
庭のがらくたが言う

ろうそく立て ビルの煉瓦
古いものと新しいもの
君と僕の思い出

買ってよ 買ってと
売店の張り紙が言う
なんでよ なんでと
庭のがらくたが言う

"Junk" Song by Paul McCartney from the album McCartney 1970

2010/09/29

Somewhere Over the Rainbow




Somewhere over the rainbow
Way up high,
There's a land that I heard of
Once in a lullaby.
Somewhere over the rainbow
Skies are blue,
And the dreams that you dare to dream
Really do come true.

ほら、あの虹より
もっとずっとうえのどこか
お母さんの子守歌に出てきた場所は
虹の彼方にあって空はいつも青い。
ほんの思いつきの希望さえ叶えてくれる場所

Someday I'll wish upon a star
And wake up where the clouds are far
Behind me.
Where troubles melt like lemon drops
Away above the chimney tops
That's where you'll find me.

いつかあの星に頼んでみよう。
ふと目覚めると僕は雲よりもずっと高いところにいて
悩み事はレモンドロップのように甘く溶けて消える。
僕はここにいるよ。
煙突のてっぺんよりももっとずっと高いところ。

Somewhere over the rainbow
Bluebirds fly.
Birds fly over the rainbow.
Why then, oh why can't I?

あの虹よりももっとうえ
幸せの鳥が飛ぶところ
鳥が虹を超えるなら
僕が超えるのはもっと簡単。

If happy little bluebirds fly
Beyond the rainbow
Why, oh why can't I?

幸せの小鳥が超えた虹の
もっとうえを超えていく僕が見える?




今朝妻が「しんちゃん。チャーくんはどこへ行ったん?」と聞くので
昨日DIONさんが教えてくれた詩を印刷して渡しました。
僕は僕でSomewhere Over the Rainbowを訳してみることにしました。

2010/06/14

We're All Alone



Outside the rain begins and it may never end
So cry no more, on the shore a dream will take us out to the sea
Forevermore, forevermore

外では雨が降り始めた。止まない雨が。
涙を拭いて。海辺で見る夢が僕たちを沖へ運ぶ。これからずっと 永遠に。

Close your eyes Amie and you can be with me
'Neath the waves through the caves of ours
Long forgotten now
We're all alone, we're all alone

僕に会いたかったら目を閉じて。
深い波の下 去ってしまった時を幾つも超えて
永く忘れていた場所
そこにいるのは僕たち二人 二人だけ。

Close the window, calm the light
And it will be all right
No need to bother now
Let it out. let it all begin
Learn how to pretend

窓を閉じて灯りを消そう
心配ないよ
君を苦しめるものはもう何もない。
君は心を開き もう一度歩き始める。
新しい姿で。

Once a story's told it can't help but grow old
Roses do, lovers too, so cast your seasons to the wind
And hold me dear, oh hold me dear

どんなお話も語られた途端に古くなり
薔薇は枯れ、恋人達も歳をとる。
輝く時は吹く風に任せて
僕のところへ戻っておいで。

Close the window, calm the light
And it will be all right
No need to bother now
Let it out. let it all begin
All's forgotten now
We're all alone, we're all alone

窓を閉じて灯りを消そう
心配ないよ
君を苦しめるものはもう何もない。
君は心を開き もう一度歩き始める。
全ては忘れ去られてしまったけれども
僕たちはそこにいる。二人だけで。

Close the window, calm the light
And it will be all right
No need to bother now
Let it out. let it all begin
Throw it to the wind, my love
Hold me dear
All's forgotten now, my love
We're all alone

窓を閉じて灯りを消そう
心配ないよ
君を苦しめるものはもう何もない。
君は心を開き もう一度歩き始める。
輝く時は吹く風に任せて
僕のところへ戻っておいで。
もう忘れてしまったかい
僕たちはそこにいた。二人だけで。
"We're All Alone" song written by Boz Scaggs 1976



Boz ScaggsのAORの名曲 We are all alone です。
大好きな曲ですが、深い意味も考えずに聴いていました。
昨日リタ・クーリッジのI'd rather leave while I'm in loveを訳したあとで
この曲も訳してみたくなり、今夜仕事から帰ってからトライしてみましたが
むつかしい!
一筋縄ではいきません。
でもがんばって訳してみました。
訳というより、自分なりに咀嚼して何とか詩の形にしたというべきでしょう。

おーい、違うぞ、そこのおっさん、ぜんぜん間違っとるぞ!
というお怒りの言葉もあろうかと思います。
どうか御海容下さい。

2010/06/13

梅雨なので艶っぽく。

rose in the rain
Large view


愛しているからさよならを

I'd rather leave while I'm in love
While I still believe the meaning of the word
I'll keep my dreams and just pretend
that you and I were never meant to end

お互いをまだ好きで、愛という言葉が意味を失わないうちに
別れましょう。まるで終わらなかったようなふりをして。

Too many times I've seen the rose die on the vine
And somebody's heart gets broken,
Usually it's mine
I don't want to take the chance of being hurt again
And you and I can't say goodbye

実を結ぶ前に枯れるバラを私は何度も眼にした。
誰かの心が折れるのも。それは私の心。
もうそんな目に遭いたくない。
でもおたがいに別れを言う勇気さえない。

So if you wake and find me gone
Hey babe, just carry on
You see I need my fantasy
I still believe it's best to leave while I'm in love

だから夜が明けて私がいなかったら
わかってほしい。
この思いと共に私が去るしかなかったことを。

Too many times I've seen the rose die on the vine
And somebody's heart gets broken,
Usually it's mine
I don't want to take the chance of being hurt again
And you and I can't say goodbye

実を結ぶ前に枯れるバラを私は何度も眼にした。
誰かの心が折れるのも。それは私の心。
もうそんな目に遭いたくない。
でもおたがいに別れを言う勇気さえない。

So if you wake and find me gone
Hey babe, just carry on
You see I need my fantasy
I still believe It's best to leave while I'm in love
I'd rather leave while I'm in love

だから夜が明けて私がいなかったら
わかってほしい。
この思いと共に私が去るしかなかったことを。
こうするしかなかったことを。




YouTubeはRita Coolidgeですが、本歌はCarole Bayer SagerとPeter Allenの共作なんですね。
歌詞もRita Coolidge版は原作と少し変わっています。
原作の方で訳してみました。

2010/01/11

スイングする「運命」

_1112038


4年間の浪人生活ののち、念願叶って大学生になった僕は、これもまた念願叶って同じ貧乏な同級生から古いステレオセットを譲り受けた。
その友人は僕とは比べものにならないくらい貧乏で、彼の貧乏揺すりも彼の貧乏そのものに負けず劣らず激しかったが、近所の子供達を集めて下宿で進学塾を始めてから急に羽振りが良くなり、新しいステレオを買ったと言って、古いステレオを軽トラに乗せて僕の下宿に持ってきてくれた。

当時の僕は音楽を心の底から愛していたが、もらいものの古い小さなテープレコーダーしか持っていなかったので、どんなにおんぼろのステレオでも、自分で買ってきたレコードを聴けるというのは何ものにも代え難い喜びだった。

高校時代はジミヘンなどのロック、浪人時代はジャズとブルースにのめり込んでいたが、大学時代はボロボロになるまで繰り返し読んだ五味康祐の「音楽巡礼」の影響でクラシックを聴くようになり、とりわけベートーヴェンとフルトヴェングラーに深く心頭していた。

明けても暮れてもフルトヴェングラー(笑)。
彼の著書や、彼にまつわる著書も集めて耽読し、彼がいかに素晴らしい指揮者であったかを、友達に滔々と説明していたから、彼等も随分辟易していただろう。

大学を卒業後病院に勤めて三日おきの当直が始まり、文字通り血と吐物と便と死体にまみれながら戦場を這いつくばって進むような日々がおよそ3年間ほど続いたあと、ようやく生活に余裕が出てきて、また音楽を聴き始めたけれど、高校、浪人、大学時代ほどの音楽に対する情熱は帰ってこなかった。

最近になって、またふと「運命」が聴きたくなった。
フルトヴェングラーの指揮する「運命」。
僕が持っていたレコードは、彼の最晩年1954年の録音だけど、第4楽章がやや冗漫で、曲が終わったと思ったらまだ続くというのが当時からの僕の印象だった。
車の中で聴くために、曲をiPhoneに取り込もうと思ってネットで調べたら、著作権切れの音楽ファイルをダウンロードできるサイトを見つけた。
すごいですね。歴史的名演が、これでもかというくらいズラッと並んでいます。
これらがすべて無料。

さっそくベートーヴェンの交響曲を選択すると、フルトヴェングラーの「運命」だけで5つもあります。カラヤンや、その他の指揮者のものも含めると20もある。よりどりみどり。

とりあえずレコードで持っていた1954年の録音と、1947年5月25日の録音をダウンロードしてiPhoneに入れました。
1947年5月25日の録音というのは、戦後フルトヴェングラーがナチスに協力したという濡れ衣の疑いが解けて、禁止されていた演奏を再開した時の録音です。
当時のドイツの人々の興奮はものすごく、彼の演奏を聴くためにお金の代わりに流通していた煙草やコーヒー豆や靴を差し出して我先にチケットを求めたと言います。

さて、その演奏は、すごい!のひとこと。
1954年の録音に比べて、この1947年の録音は、ものすごいエネルギー。
車の中で、スピーカーコーンをビビらせるほどの大音響で聴いていると、音楽の奔流に飲み込まれて、丸太のように怒濤の中を転がり回っているような気分になります。
あるいは滝壺でナイアガラの滝に打たれているような気分というか。(むちゃくちゃな比喩)

聴きながら今更ながら感じるのは、スイング感。
ジャズのスイングやグルーヴとは比較にならないほどの、ものすごいスイング感です。
例えて言うならアフリカ象が地鳴りとともにその巨体を揺らしながらスキップしているような感じ。
第4楽章は、その巨象が地響きをたてながら恐ろしい速度で猛烈にゴールに突進していくような感じ。
おそろしくも、愉快にも、驚愕にも例うべき異常なスピード感です。

いやー。気持ちいい。
ものすごく爽快になります。
ちっぽけな悩みなんか吹っ飛んじゃうかも。

フルトヴェングラー自身も、車の運転はすごいスピード狂だったみたいで、地元の警察からは今度こそあいつをとっつかまえてやると睨まれていたそうですから、このスイング感も彼の肉体のリズム感と、開放されたことの興奮から来る異常なほどの精神の高揚感から生まれたのかもしれません。

アタックNo.1で、鮎原こずえや早川みどり率いる富士見学園チームが全国大会の決勝戦に臨んだ時、本郷コーチは試合直前にチーム全員を控え室に呼びいれます。
いぶかるチームメイトの前でコーチはテープレコーダーのスイッチを入れ、「いいから黙って聞け」とベートーヴェンの「運命」を聴かせます。
不思議そうな顔をしていたチームの全員は、曲を聴き終わったあと、晴れやかな顔でコートに向かい試合に勝利し、優勝を手にするのです。
「なんでここでよりによって「運命」やねん!」と当時の僕は、この取って付けたような展開にくすぐったいような違和感を感じたものでしたが、今にしてようやく本郷コーチの思惑を理解することができました。
わかるのに40年かかりましたが(笑)。

2009/10/10

音楽の未来

18世紀初頭から18世紀後半の、絵画からも音楽からも文学からも「神」が撤退し始めて、神が去ったあとの巨大な空席に、さて何を入れるべきかをみんなが模索していた時代。

バッハはかろうじて去っていく「神」に追いついて、彼をつかまえることができた。
音楽というガワに神というコンテンツを入れると、その驚異的な上昇気流のおかげで音楽を至上の高みにまで持ち上げることが出来る。それがバッハの作品群だったのではないだろうか。

でもモーツァルトの時代は、もう神が去った後だった。
モーツァルトは中身が空っぽの人なので、自分の中に音楽を丸々入れることが出来た。
そんなモーツァルトだから、彼は必然的に「音楽」というガワに音楽そのものを注ぎ込むことが出来た。
モーツァルトという人は、音楽自身の持つ無限の自由によって「音楽に好きにさせるとどうなるか」を表現した人のような気がする。

ベートーベンに神はない。
さらに彼はモーツァルトのように空っぽの人間ではないので、自分の中に音楽を丸ごと入れることが出来ない。それは彼自身がモーツァルトと直接会って痛いほどわかっていたはずだ。
彼が自分の中に音楽を丸ごと入れることが出来ないのは、彼の中に「自分」があるからだ。(そしてそれこそが近代人の特徴なのだ。彼は音楽の世界に初めて登場した近代人だったのかもしれない)
その「自分という人間」を、音楽というガワに入れたらどうなるだろう。
僕はベートーベンという人は、「音楽」という「ガワ」に「丸のままの人間」というコンテンツを歴史上初めてぶち込んだ人だったんじゃないかと思う。
音楽というガワに人間を入れると、ガワの中に封じ込められた人間は、激しい情動の奔流でガワを引き裂こうとし、ガワを引きずり回す。音楽が、暴れ馬のように暴走する。
ベートーベンの音楽は、神から見放された人間が素っ裸で吹きすさぶ荒野をひとりぼっちで号泣しながら走り回っている姿を僕に連想させる。喜びも悲しみも絶望も希望も、もはや神のいない荒野にむき出しのまま轟き渡る。

じゃあ今の音楽はどうなんだろう。
神が抜けたあと、神の坐っていた席は大きかったので音楽というガワも大きかった。
だから神が抜けてすぐの時代の音楽や文学は、この大きななガワの中で巨大な成長を遂げ、数多くの素晴らしい交響曲や偉大な文学が数多く生まれ、トルストイやドストエフスキーやバルザックやヴィクトル・ユーゴーのような文豪が数多く輩出した。それはいわゆる「巨匠」の時代である。
しかしその後、もはや神のような巨大なコンテンツを入れる必要のなくなったガワは必然的に縮小する。
ガワはどんどん縮小の一途をたどり、今では手の平に乗る位小さくなってiPodに入るようになった。
ガワが小さくなるとコンテンツも縮小する。
それは例えば「昨日の雨」であり、「今日のあなたの一言」であり、「ロックが元気だった頃の思い出」である。
とても俳句的になっていくような気がする。

twitter