2022/12/30
L型ブラケットがグラグラ
先日GFX50SのL型ブラケットを左右逆に付ける話をした(リンク)がそれには一つ問題がある。
カメラ特化型のL型ブラケットは枠や爪でカメラ本体の底面をがっちりホールドするように作られているが汎用のプレートはそれがないので固定力が弱い。特に今回GFX50Sのために購入したL型ブラケットは左右逆に装着しているので三脚ネジで強く締め付けてもグラグラする。
どういうことかをGIFでお示しする。
三脚のネジ穴が支点でブラケットのL字部分が作用点。
支点から作用点までの距離が長いのでネジを強く締めても弱い力で簡単にL字部分が回転してしまう。
だからグラグラさせないためには何らかの方法で作用点を固定する必要がある。
しかし作用点が支点から距離があり少しの力で作用点が動くという弱点は、逆に言えば作用点を動かないようにするには少しの力で済むということでもある。
そしてL字プレートと耐震ジェルマットとカメラの側面がピッタリ押し付けられた状態で三脚ネジを締める。
するとかなり強くL字プレートを押してもビクともしない。
以上富士フイルムのGFX50Sに左右逆向けに汎用L型ブラケットを装着するという、おそらく世界で一人か二人くらいしかいないであろうご同輩にむけての記事でした。
2022/12/25
宛先のひと
最近あらためて感じたのが一般的な写真愛好家にとってレタッチに対する生理的な拒否反応がまだまだ強いということだ。
以前紹介したこちらのサイト(リンク)でアメリカのとあるプロの風景写真家の「どうして日本はまだリアリズムにこだわっているんだい?アメリカではもう10年以上も前に終わったことだよ」という言葉は決して誇張ではない。日本の写真雑誌の受賞写真を500pxやFlickrや1xのeditor's choiseの写真を比較すればその違いは明瞭だ。
別に海外が正しくて日本が間違っていると言うつもりはないが海外の写真に対する考え方の自由さに比べれば日本の写真に対するそれはある種とらわれの域を出ていない気がする。
文章を書くときのことを思い返してみよう。
私たちはある思いを文章にするときまず何も考えずそれを書いてみる。で、読み返してみて、うーん違うなぁと書き直す。そしてそれを繰り返す。何度も。
例えばそれをブログなどにアップするならアップした文章を翌日読み返してみてさらに手を加えてアップし直す。そしてやはりそれを繰り返す。
これを推敲と言うが、書き直すという行為が一体どのような観点から我々にもたらされるのかを考えるとやはりそこには「読者」という視点の想定を抜きにすることは出来ない。
ラカンは「エクリ」の序文で「文はその宛先の人なり」と書いたそうだが、要するに我々は自分の外に置いた自分や他者の目で何度も文章を書き直しているわけだ。
それを写真に置き換えてみるとレタッチという行為は写真における推敲であり、それが自分であれ他者であれ、つまり「宛先の人による書き換え行為」と考えることが出来る。
逆に、そう考えれば頑迷な撮って出し派の写真も頑迷な撮って出し派の自分への手紙と考えられないこともない。なるほど。そういう訳か。
だからレタッチするかどうかは善悪の問題ではなく「誰を宛先のひとと考えるか」の違いに過ぎないということだ。
自分だけ深く納得して自分宛の文の筆を置く。
メリークリスマス。
GF20-35mmF4のブリージング
上の写真では足元の落ち葉から遠くの木の枝まで全部にピントが合っているのがわかると思う。こういったパンフォーカスの写真を撮るのにいちばん簡単な方法は絞りを思い切り絞って撮ることだ(※1)。すると必然的にISOを上げたり露光時間を長くする必要があるが絞りすぎると小絞りボケでシャープさが失われたり高ISOで画像が荒れたり長い露光の間に被写体が風で揺れたりする。Tiltレンズを使えばこれらの問題をかなり回避できるがこの手のレンズは一般的に非常に高価だ。
最近のカメラには深度合成の機能の付いているものが多い。これは近距離から遠距離までカメラが自動で少しずつフォーカスをずらしながら撮影する機能で、それら全てをあとでPhotoshopで合成するか撮れた画像をカメラ内で合成する機能の付いたカメラもある。ただ上の景色のような近距離から遠景までの距離の幅が大きい場合だと数百枚撮影する必要がある。
近くと中間と遠くの3枚を撮って合成する方法もある。上の写真はYouTubeのこちらの動画(リンク)を参考に作成したのだがその時に問題になるのがFocus Breathingだ(フォーカスブリージング、あるいは単にブリージングとも言う)。
ブリージングというのは近くに合焦したときと遠くに合焦したときで画角が変わってしまうという現象で、動画用の高価なレンズや一部の静止画用のレンズを除いて殆どのレンズで多少とも見られる現象だ(※2)。言葉で説明してもわかりにくいと思うがこちらのサイトのGIFを見ていただければ一目瞭然なので興味のある人はどうぞ(リンク)。Google翻訳したページはこちら(リンク)。フォーカスブリージングという言葉の日本語はまだないのでGoogle翻訳では「集中呼吸」という不思議な語に翻訳されている。
ブリージングは動画ではおかしな印象をあたえるので極力排除するためにブリージングのない高価なレンズで撮影されるが単に静止画を撮っている限り気にする必要はない。しかし静止画でも上記のような深度合成をするひとにとっては無視できない問題だ。例えば近距離と遠距離の2枚の画像を合成しようとしたときに画角が変わると接合部でズレが生じるのだ。そのズレを修正するために画像にかなり手を加えなくてはならずそれがとても面倒。
さてこのブリージングという現象がまだ適切な日本語に置き換えられていないことからもわかるようにこの現象は日本ではあまり取り沙汰されていない。翻って海外でこれがしばしば問題になるのは海外の写真家は深度合成するひとが多いからだろう。
上の写真を撮ったGF20-35mmF4を紹介している富士フイルムの公式サイト(英語版)(リンク)では赤く長いスカートを翻しながら踊る女性の写真の上に以下のような説明文がある。
"Breathing has also been minimized, allowing multiple frames of the same scene to be taken at different focusing points, then seamlessly combined in post-production for ultimate sharpness."
拙訳:このレンズはまたブリージングはごくわずかであり異なるフォーカスで撮影された複数のショットをシームレスに合成することができるので究極のシャープネスを得ることができる。
ところが同公式サイトの日本語版(リンク)では女性の写真の上の説明はこのようになっている。
「ピント位置を変えた多数のショット、三脚に固定したままのピント移動など、広角レンズに求められるAF性能を極めた」
これはこのレンズがブリージングがわずかで深度合成に有利ですよという海外版での説明をはぶいているわけだが、まぁ日本の購買層はレタッチという行為に対し拒否反応を示すひとが多いし、さらに手作業で深度合成するようなひとは更に少数だからこの説明でよいのかもしれない。
さてではGF20-35mmF4のブリージングは本当に過小なのか。
上の写真を作成するにあたり短距離と中距離のあいだでブリージングはほとんど確認できなかったが中距離と遠距離のショットを合成するときに数ピクセルのズレを認めた(写真では修正済)。逆に言えばそれだけブリージングはわずかということだ。
ちなみに先程ご紹介したPetaPixelの記事にはブリージングの影響を小さくする方法が記載されていたので合わせて記載しておくと
- ブリージングの小さな高額レンズを買うこと(まぁね)
- 近距離から遠距離まで合焦幅の大きい撮影は避けること(確かに)
- 最大倍率の小さなレンズより大きなレンズのほうがブリージングは少ない(ほぅ!)
- 持っているレンズを同条件で撮影しブリージングの少ない方を使う(それはない)
(※1)厳密にはパンフォーカスではなく被写界深度が非常に深い写真
2022/12/24
Fallingwater
フランク・ロイド・ライトの落水荘をイメージした写真です。ライトの落水荘(リンク)は滝の上にあるのは彼の設計した建物ですがこちらは大きな自然石。形が四角いのでライトの建物によく似ています。いや結果的にそうなっただけなんですが。
2022/12/23
瑠璃渓谷で転倒の巻
GF20-35mmF4の試し撮りに京都のるり渓へ行ってきた。雨模様だったせいか僕以外誰もおらず気楽な撮影行。
ここでは以前Sigma dp0 Quattroで写真を撮っている(リンク)が同じ構図ではつまらない。川の向こうからはどんな景色だろうと思って、リュックと三脚を置いてカメラだけ持って川を渡ることにした。写真では小さな渓流に見えると思うがこれは20mmの広角で撮っているからで実際には川幅は3メートル以上ある。
上の写真の右下のあたりで川を渡ろうとしたのだが、途中で派手に転倒!愛用のGFX50Sと買ったばかりのGF20-35mmF4を岩にぶつけて危うくお釈迦にするところだった。いや実際カメラとレンズが無傷だったのは奇跡。あぁ本当に危なかった!
どうする?戻るか。いやここからの構図はいいんだし頑張って撮ろうと思ってカメラはその場に置いてリュックと三脚を取りに戻るためにもう一度川を渡ろうとして更に2回転倒!
いや油断したわけじゃなく一歩一歩足元を確かめながら歩を進めたのだがダメだ。ヌルヌル滑るのだ。多少苔でヌルヌルしていても、まだスパイクの摩耗していない新品のスパイクブーツなら大丈夫だろうと思っていたが全然ダメだった。やっぱり靴底はフェルトスパイクでないとダメだとあらためて実感。
なんとかリュックと三脚を持ってカメラを置いていたこの場所に戻って、三脚を立ててレンズの水滴をハンカチで拭って撮影(ブロワーを持ってくるべきだった!)。
3回も川の中で転倒したので全身ずぶ濡れ。寒いしすっかり気力をなくしてしまったのでNDフィルターやCPLフィルターやリモートレリーズも付けず10秒タイマーだけで撮影し川上の傾斜のほぼ平らな場所で川を渡って帰宅した。
2022/12/20
L型ブラケットを左右逆に取り付ける
先日リモートレリーズをGFXロゴの小窓に差し込めることに気付いてよろこんだがやっぱりL型ブラケットが邪魔。まさかジャックに刺したレリーズをぶら下げながら場所移動するわけにいかない。その都度さし込むにしても縦位置で三脚に固定するにはコードをブラケットの内側を通さないといけない。これがとても面倒。さらにGFX50Sの液晶モニターは左開きなので縦位置で高所から撮るときに液晶モニターを下向きに出来ない。L型ブラケットを左右逆に装着出来れば全て解決するだろうと考えた。
GFX50Sの底部の三脚用ねじ穴の中心から右側面までの長さは10cm弱ある。L型ブラケットのねじ穴は大抵端から2cmほどなので底面の長径は最低12cm。13cm以上あれば大丈夫だろうと考えて注文したのがこちら(アマゾンのリンク)。
装着した図
このブラケットの底面の長さは132mm。
ストラップ取り付け金具との間に少し余裕がある。
横位置
縦位置
液晶モニターを下向きに出来るしリモートレリーズのジャックも上から差し込める。
2022/12/19
なぜズームレンズを買うようになったのか
僕は今までたくさんのレンズを購入してきたが大昔にニコンの35-70mmを1本買った以外はすべて単焦点だ(そのズームもすでに売却)。
単焦点ばかり買ってきた理由は僕が主にマクロを撮っていたからで、対象がシャープに写ることはもちろんだが背景が大きくボケるためには明るいレンズが必要で、そのためにはズームより単焦点のほうが有利だ。
その僕がFuji GFX50Sで撮りだしてから3本もズームレンズを買ってしまった(GF20-35mmF4, GF32-64mmF4, GF100-200mmF5.6)。
なぜあれほど単焦点ばかり買っていたのにズームを買うようになったのか、それは僕の中ではあまり意識化されていなかったが今日ぼんやりとMark Denney氏の動画(リンク)を見ていて気が付いた。
写真を撮る上で何を一番重視するかはひとそれぞれだと思うが、僕の場合は構図がとても大切。対象が画面の中でどのように位置付けられるかがとても重要で、撮ったあとのレタッチでもわずか0.1°、場合によっては0.05°単位で画像の傾きを調整したりシフトしたりあおったり数ピクセル単位のトリミングをしたりコンテンツに応じた拡大なんてことを延々と繰り返すのが常だ。まずそれ以前にもちろん現場で何枚も構図を変えて撮影するわけだが、マクロの場合は別にズームでなくても単焦点で自分が前後左右に移動して望みの構図を得ることが出来る(それにしてはおまえの構図はあれこれへんてこりんやないかと言われればそれまでだが)。
でも僕の興味がマクロよりも広々とした風景に移行してそれをGFXで撮るようになると望みの構図を得るために自分がてくてく歩いて前進したり後退したりしなくてはならない。場合によってはそれより後ろに行けなかったり前に行けなかったりする。
つまり風景における構図決めは必然的にズームレンズを要求すると。
いやいや単焦点でトリミングすればいいじゃないか。
でも現場で構図決めが出来ると心置きなく次のステップに進める気がする(次のステップというのはその場での撮影を撤収して次のロケーションへ移動すること)。その場で決めたい。その場で手応えが欲しい。その場で感動したい。で、次のロケーションへ。それが出来ないと何となく気持ちが悪い。キターと思って、ホクホクしながら次のロケーションへ行きたいわけだ。その、キターが来なければその場でセッティングを変えてあれこれ撮ってその場でのキターを追いかける。もしあとでトリミングするからいいやとなるとPCの前であぁ、現場でもうちょっとこうすればよかったのにと思うんじゃないか。
まぁ自分の中の興味の変遷の理由に気が付いたので書き残してみただけの文章ですが。
2022/12/18
晩秋の渓流
GF23mmを下取りに出して買ったGF20-35mmが昨日届いたので雨模様だったけど川べりへ行って撮影。いくつか気づいたこと。
- H&YのCPLフィルターはレボリングを外しても四隅少し蹴られる。
- 富士フイルムのアプリでの撮影はほぼ問題ないが撮れたiPhoneで画像を確認しようとすると画像転送状態になってwifiが切れる。
- GITZOの三脚は使用後に水抜きが必要だがスポンと抜いたときに2つの鞘状の白いプラスチックがずれて再装填に手間取る。これは帰宅後にこの鞘無しで使えるか試してみたら何の問題もなかった。何のための鞘?(※)
- 使い慣れていないせいかズームレンズはいつの間にか焦点距離が変わっている。撮影のたびにチェックが必要。
- 岩場では足をグネやすいのでスパイクブーツはやっぱりサイズの合ったものを履かないと危ない。
- iPhoneでモニタリングするとき片手にiPhoneを持ってもう一方の手でギヤ雲台を操作するのは厳しい。今度からちゃんと三脚に付けるiPhoneホルダーを持ってくることにしよう。
- 先日リモートレリーズをGFXロゴの小窓に差し込めることに気付いてよろこんだがやっぱりL型ブラケットが邪魔。まさかジャックに刺したレリーズをぶら下げながら場所移動するわけにいかない。その都度さし込むにしても縦位置で三脚に固定するにはコードをブラケットの内側を通さないといけない。これがとても面倒。さらにGFX50Sの液晶モニターは左開きなので縦位置で高所から撮るときに液晶モニターを下向きに出来ない。L型ブラケットを左右逆に装着出来れば全て解決すると思って底部の長いL型ブラケットを探すことにした。
- 撮れた写真はとても満足いくものだった。23mmの単焦点を手放すことに躊躇がなかったわけではないがもう少し画角が広ければという望みに従うことにした。画質は23mm単に劣らず良好だ。
(※):後日記;調べてみたらこれはhose clampという部品でこれがあるおかげで脚がスッぽ抜けない。必要な部品だ。しかし水抜きのときにバラけるので接着剤で貼り付けることにした。
2022/12/17
GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR
GFXでマクロを撮るために購入したGF120mmF4だがいまいち愛着がわかなかった理由の一つに開放での硬さがある。いやあくまで僕の印象だが。それでマクロはもうD850で行こうと考えてGF120mmを下取りに出してGFXの風景用にGF100-200mmF5.6を買った。試しにエクステンションチューブのMCEX-45G WRを装着してみたら結構マクロとして使えることがわかった。ワイド端での最大撮影倍率は0.77。これは同じ45ミリのエクステンションチューブを付けたGF120mmの最大撮影倍率1.0に迫る。しかもこの45mmを付けた状態でのワーキングディスタンスは広角端の10cmからテレ端の109cmまで非常に幅がある。通常のレンズにエクステンションチューブを付けてマクロを撮るときに一番不便なのが合焦域の狭さなのだがズームでこれほど合焦域が広がると思わなかった。
それで富士フイルムのPDF(リンク)と以前に書いた記事(リンク)を見ながらこういうメモ書きを作った。左端は広角端とテレ端の焦点距離。その右はそれぞれの合焦範囲(cm)。その右は18mmのエクステンションチューブ装着時の合焦範囲。右端は45mmのエクステンションチューブ装着時の合焦範囲。
でそれをレンズの鏡筒に貼り付けた。まぁ実際にどの程度マクロとして使うかはまだ未知数だが。
2022/12/16
レンズの結露について
マクロやポートレートはD850に任せて風景はGFX50Sで撮ろうと考えた。
それでGF120mmマクロを下取りに出してGF100-200mmを購入。
宅配便で届いたGF100-200mmは冷え冷えだったがさっそくGFXに装着してファインダーを覗いたら前玉が曇ってなにも見えない。ガスストーブの温風に当てて曇りが消えてからファインダーを覗きズームリングをグニグニ回していたらまた曇りだした。前玉から覗き込んだら中玉が曇っている!
あちゃ~。やっちまった。こりゃ大変!と前後のキャップを外して防湿庫に入れて1時間ほどして確認したら曇りが消えていたのでホッと胸をなでおろした。念のため明日まで防湿庫に置いておくことにしよう。しかしこのレンズは防塵防滴仕様なのになぜ中玉が曇ったのだろう。ひょっとするとズームレンズはズームを動かすたびにまるで呼吸するように外気が出入りしているのかもしれない。
そもそも結露という現象について自分はあまりに無頓着だった。
そこでこの際だからと考察してみた。
ご存知のように水には固体(氷)・液体(水)・気体(水蒸気)の三態がある。空気中の水は目に見えるものとして霧や雲や湯気があるがこれらは細かな液体だ。それに対して水蒸気は見ることはできない。それは気体として空気に溶け込んでいる。
さて、空気がどれだけの量の「気体としての水」を保持できるかを飽和水蒸気量と言うのだがそれは温度と関係がある。温度が高いほど空気はたくさんの水を気体として抱え込むことができる(すなわち飽和水蒸気量が増える)。逆に、冷たい空気が「気体としての水」を保持できる量はわずかであり、その量を超えると水は液体になって霧や雲や湯気や結露としてあらわれる。
外気で冷えたレンズを湿度のある暖かい部屋に持っていくとどうなるだろう。暖房の効いた室内は暖かいのでたくさんの気体の水を保持している。この、たくさんの気体の水を保持した暖かい空気が冷たいレンズに触れると急激に温度が下がって気体の水を保持できなくなり、あふれ出した液体の水がレンズに付着する。これが結露だ。
観葉植物の写真を撮ろうと思って温室に入ったときにレンズが結露するのはなぜだろう。高温多湿の温室の空気は保持できるギリギリまで水分を保持している。温室に入ったばかりのレンズの温度は当然温室の気温より低いのでレンズ前の空気が保持できる気体の水分量が飽和水蒸気量を超えて結露する。
外で冷えたレンズを室内に持って入るときにゆっくりと室温に戻したほうがいいという説がある。ゆっくりだろうが素早くだろうがレンズの温度が部屋の露点温度より低ければ結露は発生する。しかし内外の温度差が大きいほど水滴は速く大きくなるだろう。温度差が少なければ結露の成長速度は遅いだろう。ゆっくり結露が成長して目に見えるほどになる前にレンズの温度が上がってくればまるで結露しなかったようにみえるだろう。
寒冷地で翌朝撮影に行くときにあらかじめレンズを装着したカメラを外に出して冷やしておいたらいいという説がある。寒い朝に霜が降りるようなことがレンズの表面で発生するかもしれない。レンズの温度が外気温と同じであっても、外気の温度がその場の露点温度より低ければ結露するだろう。
要するに湿度が高かろうが低かろうがレンズ表面の空気温度が高いほど飽和水蒸気量は増える。レンズそのものの温度が外気の露点温度より高ければ結露しない。寒冷地に行くときはレンズヒーターを用意しておいたほうがいいかもしれない。
追記:
寒い朝に川の上に湯気が立っているのを見たことがある。川の水が沸騰しているわけでもないのになぜ湯気が立つのだろう。これは川霧といって、気温が0℃前後以下と低く、かつ川の水温が高く、気温と水温との温度差がおよそ8℃以上になるときに発生するらしい。川から蒸発した水蒸気が冷たい空気に触れて結露したものを見ていると言えるかもしれない。